理科教育の発展と「実習助手」
問題の解決のために
(最終答申)
1998年10月1日
理科教育と「実習助手」問題検討委員会
[1]「中間答申(1996・7)」以降の検討の経過と本答申の位置付け
(1)検討委員会が1996年7月に提出した「中間答申」は、実験・実習の現状や「実習助手」制度の問題点を明らかにし、理科教育の充実・発展の観点から、「実習助手」制度を廃止しての教諭への一元化、実験・実習の教諭による複数指導などを柱とする、改革の方向性を提起しました。a[†後半の資料「中間答申」を参照]
その後検討委員会は、具体的内容の検討を進める一方、学習交流集会(2回)、各校での論議の呼びかけとアンケート活動(96年12月実施)、「Q&A」の発行(97年4月)、教諭と実習教員への聞き取り調査など、中間答申の内容を広め、各校での論議を促進し、答申内容への意見を集約する取り組みを進めてきました。
一方、府高学職部・実習教員委員会は、制度改革を展望しつつも、当面する要求として、待遇改善と職名変更を求める要求署名運動を進めています。
(2)中間答申の内容に対する賛否や意見を求める「アンケート」(回答数121名=理科教諭92名、実習教員29名)の結果からいくつかの項目を抜粋します。a[†2ページを参照]
「実習助手」制度をなくし教諭に一元化することには、グラフ3のように、とりわけ教諭で意見が大きく分かれました。ただし、記述回答では、「賛成の立場だが現職の実習教員の方の希望や要求について配慮したい」との意見が目立ちました。また、実習教員では、「現在のような制度が今後も続くのはよくないので一元化には賛成だが、自分自身が教諭になっていくことには不安が大きい」というのが、多数の意見と読み取れました。
このアンケート結果を通じて、教諭一元化と実験・実習の複数指導に対して、回答者の中の次のような問題意識が明らかになったと考えられます。
@教諭一元化への態度を問わず、「現職の『実習助手』(=以下、『現職者』と記します。)の 意向や要求」について関心を向けていること。
A「反対」や「決めかねる」人の中に、「教育観の違う相手とはやりにくい」「自分の思うよう に展開したい」という意見が多いこと。
B実験・実習を能率よく効果的に進めるためには、何らかの形での「分業」は必要であると考え ている人が、一元化への賛否を問わず、かなりあること。
検討委員会では、これらの意見を踏まえて、最終答申の検討をすすめました。
(3)「中間答申」の内容について、全体としては肯定的・積極的に受けとめる意見が相対的に多いものの、中間答申発表後の取り組みの中で、上記のように教諭・実習教員のそれぞれに、さまざまな意見や要望があることがつかめてきました。検討委員会は、検討をすすめる一方で、これらに対し「Q&A」の形で考え方を明らかにしてきました。その内容の概略は次の通りです。
@現在の制度のまま待遇改善や職務内容の明確化をめざせばという意見に対して。
現在の制度の矛盾や困難には法的な土台・根拠があり、ここを改めないと根本的な解決がで きない。
A職業科での教諭への任用替えと同じようにすればよいという意見に対して。
そのためには、制度上「理科実験」を科目として独立させることが必要だが、理科実験の位 置付けから考えて「講義」の授業と切り離すのは理科教育にとってよくないし、制度の矛盾の 根本的な解決にもならない。
B短大出身の私に教諭と同じことができるとは思えないという意見に対して。
免許取得のための学習を進める中で自信と力量をつける一方、現職者の希望によっては、過 渡的に「実験・実習だけを担当する理科教諭」として運用したり、分掌配置で配慮をするなど、 一元化の経過を踏まえた校内の合意をすすめていくことが大切。
C一元化で教職員定数が減らされたり、理科だけ持ち時間数が減って校内合意がはかれないので はという意見に対して。
中間答申の提起では、クラス・講座の実験・実習の時間に加わる人は、単位数の0.5倍を 持ち時間として時間割に組み込むので、おおむね現在の教諭+実習教員以上の定数は確保され るし、1人の持ち時間数は他の教科と変わらない。
D教育観や指導の観点の違いのため、実際には実験・実習がやりにくくなるのではないか、また、 自分の教育観に他の人が踏み込んでほしくないという意見に対して。
実験・実習の観点や方法の違いは、むしろお互いの研修や授業改善にとってプラスに作用さ せ得ると考えられる。また、クラス・講座の授業を担当する教諭に実験・実習の時だけ他の教 諭が加わる形なので、主・副の関係での複数指導が、当面は一般的な形態になると考えられる。 実際の運用形態についてはさらに検討を加えていくが、実現した際には、各校での実情に応じ た運用の工夫が大切になる。
(4)一部の学校では、理科教諭の平均持ち時間数が減少している有利な条件を生かし、実験・実習の教諭による複数指導の試行に取り組み始めています。
この最終答申は、中間答申を踏まえ、出されている意見や要望・問題点について検討し、さらに中間答申の内容であいまいな点、引き続き検討すべきとして残されていた点を補足・整理したものとして、提出するものです。
[2]複数指導の意義と、実際の運用・具体的展開例
(1)教諭による実験・実習の複数指導の積極的意義について
中間答申では、理科教育の充実・発展のための改善の一つの方法として、教諭による実験・実習の複数指導を提起しました。
これに対して、「チームワークが必要なので、組織的に計画が行なえるよう、時間的・物質的なゆとりが必要。」「複数の教諭で実験・実習をする場合、個性が失われ、どこでも同じことばかりやっている状況がでてこないように考える必要がある。」「教育観や生徒指導の観点の違う教諭どうしが、同時に実験を受け持つのは困難である。」などの問題点が指摘されました。
教諭による複数指導に反対・保留する意見に、教育観の違いの問題があります。しかし、教育観の違いは、複数指導の大きなネックになるのでしようか。
まず、実際の職場の実態から見ると、科目によって差があるものの、同一科目での実験が教諭ごとに大きく異なっているということは、少ないといえます。学校によっては、事前の打ち合わせにより共通の実験をベースにやっています。したがって、現状から見ても、お互いの教育観を尊重しながら、実験内容や指導方法また評価の観点を調整して実施することは可能です。次に、現実の複数指導の経験から言えば、教育観の違いは大きな障害とはならず、むしろ違いがあるからこそ、実践を通じて「生徒たちにとって楽しくより本質的な実験にするにはどうしたらよいのか」、「実験を安全でスムーズに行うには、どんな工夫があるのか」、「評価はどうしたらよいのか」などについて互いに深めることができています。
教育をとりまくさまざまな困難な状況がある中で、自然科学の基礎・基本をすべての国民のものにするためには、各自の授業を交流し、教育内容や方法について共通理解をつくりだす必要があります。共通理解できたことを踏まえた個性的な授業が求められます。教育観の違いを困難点ととらえて複数指導を避けるのではなく、それを積極的に活用する方向に理科教育発展の展望があります。
さらに、もし複数指導において「実習助手」とならよくて、教諭同士はだめだとすれば、それは「実習助手」制度の矛盾・問題の一つの現れです。
教諭による実験・実習の複数指導の積極的意義を整理すると、次のようになります。
@お互いの実験指導の良い面が学びあえ、指導技術の向上につながる。
A実験内容について、お互いに率直な意見や経験を交流することで、細かな改善点を含め、より 優れた教材や内容の開発が追究できる。また、実験・実習が学校の財産として蓄積できる。
B最近の生徒の状況から安全性などの点で困難と判断していた実験が、複数で取り組むことで可 能になる。
C生徒の疑問や質問にも即答できるなど、きめ細かい指導ができる。
D教諭と「実習助手」との複数指導体制では、生徒が「実習助手」を補佐的な人として受けとめ、 指導が入りにくいという困難点を解消できる。
(2)教諭による実験・実習の複数指導を行うために
@教諭による実験・実習の複数指導の実際について
前項で複数指導の積極的意義について述べましたが、2人の教諭がlつの教室に入り対等平等の関係で指導する場合、役割分担をはっきりさせておく必要があります。実際には、具体的展開例に示してある通り、講座担当者が実験・実習の指導を含め、その講座の指導に責任を持ち、複数指導担当者は実験・実習の指導を援助するという役割を果たすこと
になります。その一つの例として、講座担当者がメイン指導(実験の
説明+実験指導)にあたり、複数指導担当者はサブ指導(実験指導)
にあたる方法が考えられます。このとき、共通理解できたことを踏ま
えて講座担当者が講座の授業計画を決定できる自由な雰囲気をなくさ
ないように注意する必要があります。
A実験・実習をスムーズに進める分業について
教諭一元化に対して賛成の立場の人からも、反対の立場の人からも共通して「分業の必要性」が多く指摘されました。充分な時間が保障された条件下で、効率にとらわれず、試行錯誤をしながら実験・実習ができるのに越したことはありません。しかし実際問題として、限られた時間で準備・後片付けをスムーズに行ない、実験・実習を効率的に実施するためには、分業をするのも一つの方法です。
具体的展開例では、中間答申で提案した「差をつけない方法」に加えて、「実験室担当者」や「実験・実習担当者」を決めるなど、教諭が役割分担をすることで実験・実習をスムーズに実施する方法の例を示しました。「差をつけない方法」が現制度の問題点を根本的に解決する理想的な方法ですが、実験室管理や実験・実習の効率的運用には、経験の蓄積と十分な時間的保障が必要です。「実験室担当者」や「実験・実習担当者」を決めるときには、本人の希望がない限り、毎年同じ人に固定されないように注意する必要があります。また、いずれの方法をとるにせよ、実験・実習の時間が時間割に明記されますので、今よりは計画性が要求されることになります。もちろん、時間割に明記された実験・実習時間以外の時間に教育上必要とする場合は、講座担当者と複数指導担当者の協力と納得の下で、実験・実習を実施することも可能です。
B単位数を1.5倍して理科教諭の定数を決める根拠と小規模校への配慮について
実験・実習を行なうためには講義をする場合と比較して、予備実験・準備と後片付け・複数指導・備品薬品の管理等の仕事が余分に必要です。これを時間に換算すると、実験・実習の時間数の2倍程度になります。年間授業時数の25%程度の実験・実習を行なうとして、以上のことを根拠に実験・実習を行なうために必要な時間を算出すると、単位数の1/2程度になります。したがって、理科の単位数を1.5倍して算出した総時間数を基にして理科教諭の定数を決定することになりますが、この方法で決めた理科教諭の定数が1名になる小規模校には2名の理科教諭の配置を求めます。
(3)理科教諭による実験・実習の複数指導の具体的展開例
上記の方法で算出した理科教諭の定数で展開できる具体的展開例として考えられるものを示します。学校によって教育課程や講座数が異なりますので、具体的展開例を参考にして、それぞれの学校に合った実験・実習の複数指導の方法を研究し、実践することが必要です。中間答申の具体的展開例の「担当クラス」、「実験クラス」という表現に対して、講義を担当する教諭と実験・実習を担当する教諭が異なっているという誤解が多くありましたので、それぞれ「担当講座」、「複数指導担当講座」という表現に改めました。
《具体的展開例@》 差をつけない方法
@)年間指導計画作り、予備実験、実験プリント作成、実験・実習の指導、レポートの評価は、講座担当者と複数指導担当者が協力して行なうが、講座担当者が責任を持つ。
A)備品薬品管理と実験・実習の準備・後片付けは、講座担当者と複数指導担当者が協力して行なう。
物理IB 4単位4講座 化学IB 4単位4講座 生物IB 4単位4講座
地学IB 4単位4講座 総合理科 2単位2講座 合計68時間の場合
理科教諭の定数(持ち時間数の最大を18時間として計算)
68×1.5/18=5.7=6名
◇以下、具体的展開例A、Bでも、科目、単位数、定数は同様とします。
教諭 担当講座 小計 複数指導担当講座 小計 合計 備考
ア 物A,B,C 12 化A,B 総A 5 17 −
イ 化A,B 総A 10 物D 化C,D 6 16 −
ウ 物D 化C,D 12 物A,B,C 6 18 −
エ 生A,B,C 12 地A,B 総B 5 17 −
オ 地A,B 総B 10 生D 地C,D 6 16 −
カ 生D 地C,D 12 生A,B,C 6 18 −
計 68 34 102 −
《具体的展開例A》 実験室担当者を決める方法
@)年度当初までに教科会議で、実験室担当者を実験室あたり1名の割合で決め、担当講座数を少なめにし、複数指導担当講座数を多めにする。
A)年間指導計画作り、予備実験、実験プリント作成、実験・実習の指導、レポートの評価は、関係者が協力して行なうが、講座担当者が責任を持つ。
B)備品薬品管理と実験・実習の準備・後片付けは、実験室担当者が中心になって行なう。
教諭 担当講座 小計 複数指導担当講座 小計 合計 備考
ア 物A,B 8 化A,B,物C,D 総A 9 17 物理実験室担当
イ 化A,B 8 物A,B,化C,D 8 16 化学実験室担当
ウ 生A,B 8 地A,B,生C,D 8 16 生物実験室担当
エ 地A,B 8 生A,B,地C,D 総B 9 17 地学実験室担当
オ 物C,D 化C,D 総A 18 0 18
カ 生C,D 地C,D 総B 18 0 18
計 68 34 102
《具体的展開例B》 実験・実習担当者を決める方法
@)年度当初までに、教科会議で実験・実習担当者を決める。
A)年間指導計画作り、予備実験、実験プリント作成、実験・実習の指導、レポートの評価は、講座担当者と実験・実習担当者が協力して行なうが、講座担当者が責任を持つ。
B)備品薬品管理と実験・実習の準備・後片付けは、実験・実習担当者が中心になって行なう。C)実験・実習担当者は実験・実習の指導だけを担当する。
教諭 担当講座 小計 複数指導担当講座 小計 合計 備考
ア 物A,B,C,D 総A 18 18
イ 化A,B,C,D 総B 18 18
ウ 生A,B,C,D 16 16
エ 地A,B,C,D 16 16
オ 物A,B,C,D 化A,B,C,D 総A 17 17 実験実習担当
カ 生A,B,C,D 地A,B,C,D 総B 17 17 実験実習担当
計 68 34 102
《具体的展開例についての補足》
@各教科の単位数、講座数を均等にしたのは、ゆがんだ現実を肯定したくないという思いがあり、そうすることで表の意味することを読みとる妨げにもならないと判断したからです。
A持ち時間数の上限を18時間にしたのは、それを肯定しているわけではありませんが、「理科だけ持ち時間数を減らすのか」等の誤解をさけ、表の意味するところを読みとりやすくするためです。
B新教育課程で科目や単位数が変わりますが、置き換えて考えてください。
[3]教諭一元化を実施する際の経過措置について
(1)現職者に対する経過措置の基本的な考え方
一定の経過措置の期間中は現行の「実習助手」制度が存続しますから、現職者は現在の仕事を継続することができます。しかし、期間終
了後には「実習助手」制度は廃止され、理科教育に携わる者は「教諭」のみとなります。すなわち、現在「実習助手」として働いている人は
経過措置の期間が終了する時には、全員「実習助手」以外の立場になっていなければなりません。教諭一元化へ移行する過程では、この現
職者に対する経過措置も大切な課題です。
制度改革は、理科教育の課題を解決すると同時に「実習助手」制度の課題も解決しようとするものです。当然のことながら、これまで理
科教育を支えてきた現職者に対する経過措置は、個々の条件や希望が最大限尊重されたものでなければなりません。
基本的には、中間答申でも述べたように、教諭に一元化する過程の中で現職者も理科教諭として、引き続き理科教育にかかわっていくことを展望しています。しかし、現実に現職者個々の条件や希望を尊重するためには、単に理科教諭に任用するというだけでなく、もっと広い選択の余地が必要と考えます。
(2)現職者個々の条件や希望を尊重するための課題
現職者がどの道を選択したとしても、それまでとは違う仕事をする事になるわけですから、本人の精神的、肉体的な負担が最小限にとどめられるような条件整備をし、全ての現職者の希望がかない、安心して働き続けられる労働の場が保障されることが大切です。
@理科教諭への道を選択する場合に保障すべきこと
ア.誰もが無理なく理科教諭免許を取得できる条件を保障する。
理科教諭に任用されるためには、免許を持っていない現職者は、まず所定の過程を経て理科教諭免許を取得しなければなりません。したがって、制度改革後は、誰もが無理なく単位を修得できるよう、必要な検定試験、認定講習・研修会などを開くとともに、外部の認定講習会などに出席できるようにするなど、それらへの参加を保障するための勤務条件の整備を教育委員会が行うことになります。
イ.本人の希望と納得に応じた労働条件を保障する。
理科免許を取得したとしても、長年実験・実習のみを担当してきた人にとって、講義を担当することへの不安はあって当然です。しかし、現在の「実習助手」の採用条件(短大卒以上・教諭免許保持者)からみると、制度改革が実現し、さらに経過措置の期間が終了する頃には、大多数の現職者が十分に講義を担当できる力量を身につけていると考えられます。しかし、具体的展開例Bにもあるように、理科教諭として実験・実習のみを担当することも可能です。このような本人の希望を尊重できるように、校内の合意をすすめたり、教育委員会に要望することも必要です。
また、クラス担任を持つことへの不安の声もありますが、分掌配置については現在もさまざまな事情によって配慮が行われている実態からみても、校内人事である程度解決できる問題だと思われます。一方、現在「実習助手」はすでに分掌に所属してさまざまな経験を積んでおり、担任に必要な知識と経験が備えられつつあります。実際に、採用されて間もない教諭が担任をしたり、教員免許法付則11項によって職業学科の「実習助手」から教諭に任用された人がすぐクラス担任を持ったりしています。
ここにあげたこと以外にもさまざまな不安や要望が出されると考えられます。もちろん、今後はそれら一つ一つの声を丁寧に取り上げ、制度改革の主旨が実現するような解決の道を探していかなければなりません。
A理科教諭以外の道を選択する場合に保障すべきこと
具体的には、他教科の教諭や教諭以外の職種への道が考えられます。しかし、職種によっては理科教諭と同様に免許や資格の取得が必要です。教諭免許や資格をもっている人は、それが活用できるようにすること、また新たに免許・資格の取得を希望する場合にはその条件整備を保障することなどを含め、本人の希望が最大限尊重されることが必要です。
B職場の合意と民主的学校運営が大切
教諭一元化は、「実習助手」制度を廃止することが目的です。ですから「実習助手」の教諭への任用替えは、あくまで教諭一元化に付随する一時的な措置です。また、他の教科・職種・校種への任用替えが行われる場合も全く同様です。職場の不理解から現職者の学歴や経歴に対する差別や身分上の不利益があってはなりません。なぜ制度改革が必要なのかという原点に立ち返り、民主的な学校運営が行われることが何よりも大切です。
[4]制度改革に関わる行政への要求項目
(1)国の法や制度にかかわる要求
中間答申で提起しているように、
@「学校教育法」第50条を改正し、「実習助手」を廃止する。
A「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」を改め、複数指導 体制がとれる人数に改正する。
これらの点では、政府・文部省への働きかけや、国会請願運動を旺盛に展開していくことが必要です。
(2)京都府教育委員会への要求
今すぐに法律改正へ進まなくても、府独自の措置としてできることを要求していく必要があります。
@新たに「実習助手」を採用せず、その人数は教諭として採用すること。
A実験・実習の複数指導体制が取れる教員数(教諭+「実習助手」)を配置すること。
B制度改革を展望して、現職者の希望や意向をよくつかみ、それを尊重すること。任用や免許取得で本人の希望が生かされるように、
・現在、理科の教員免許を持っている人で、希望があれば、理科教諭として任用すること。
・理科以外の教科の免許を持っている人で、希望があれば、該当教科の教諭に任用すること。
・教育職以外の職種を希望する人には、希望する職種へ任用すること。
C教諭免許取得のために
・教諭免許の取得を希望する人のために、教育委員会が、検定試験、認定講習を開催すること。・また、希望者へ公開講座を実施したり、研修の機会を保障すること。
・外部の認定講習会等に参加できるようにすること。
D現職者で実験・実習担当者を希望する人が同一校に重ならないよう、人事異動を行うときは配慮すること。
[5]おわりに
理科教育と実験・実習の現状がかかえる課題について考え、理科教育を21世紀にさらに発展させようとするとき、それが「実習助手」制度と深くかかわっていることから、本検討委員会では、2年前に1年余りの検討でまとめた中間答申を提出し、広く組合員や理科の関係者に論議を訴えてきました。その経過は冒頭に記した通りです。
制度上の課題、教育政策上の課題、教育への姿勢の問題、教育運動に関わる問題が複雑に絡み合った問題であって、ともすれば議論があちこちいってまとまらない時期もありましたが、各学校からのご協力と、36回にわたる検討委員会での議論の積み重ねで、ようやく最終答申にこぎつけることができました。この答申をきっかけに、理科教育と実験・実習のあり方をめぐる論議が活発に行われ、教育実践やその交流が一段と広がるよう期待しています。
もとより制度上の課題は京都のみで解決できるものではなく、制度改革には全国的な運動が必要です。日高教でも同様の取り組みが行われており、私たちもこの答申で全国的論議に加わりたいと思います。また、「最終」と銘打っていますが、他の実習を伴う教科をはじめ、まだまだ多くの教職員の視点で議論を尽くさねばならないものと考えています。
最後に、本検討委員会として、理科教育の発展と「実習助手」制度改革を求める本答申の主旨が、教職員組合が運動の核となって実現されていくことを、強く願っています。
[検討委員名簿]
伊藤哲英(桃山定)、岩間正樹(洛北、1999年4月から西乙訓)、小田公生(久御山、1999年4月から八幡)、後藤次郎(南丹)、平田のぞみ(城南)、福島淳一(東稜:委員長)、松本紀美子(久御山)、山田信人(木津)
《オブザーバー》小野英喜(朱雀)、《事務局》竹脇隆(朱雀)
◇ご意見をお寄せください。
京都府立高等学校教職員組合
〒606−8397 京都市左京区丸太町新道上ル 教育会館内
TEL 075−751−1645
FAX 075−752−2988
[資料1]中間答申
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1996年7月15日
理科教育と「実習助手」問題検討委員会
[はじめに]
理科教育と「実習助手」問題検討委員会は、1995年9月に京都府立高等学校教職員組合常任執行委員会の諮問を受けて発足し、@「実習助手」制度の改革の方向性、A理科教育のあり方とその中での実験・実習の位置付けの2つの検討課題について、これまで11回の検討委員会を開いて検討を進めてきました。 今回、討議の到達点を「中間答申」の形で明らかにして、各学校での論議や学習を呼びかけ、それに基づく意見を集約して最終の答申をまとめていくことになりました。8月24日に計画されている「理科教諭と実習職員の学習交流集会」を成功させ、秋にかけて各学校でこの中間答申を使った論議を積極的に行っていただいて、意見集約を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
[1]理科教育における実験・実習
(1)理科実験・実習の重要性
理科教育の目標は、自然科学の体系的学習であり、自然科学の概念を理解し、自然や物質の法則性を認識して、豊かな自然観を身につけることにあります。また、自然科学の成果をもとに現代文明が確立されたことや、それを支える基盤としての社会的役割や機能を認識し、自然と人間との調和的共存について理解を深めることにあります。
そのためには、自然を構成する物質の世界をありのままに観察したり、変化させてその性質を調べたり、時間の経過による進化や空間の広がりを認識するための直接体験が必要です。座学だけでは、知識は増えても本物の自然の理解には結びつきません。書物からの知識に加え、生徒自らが直接自然に触れてこそ豊かな自然認識が培われます。物質や自然を法則的に認識することは、具体的な事例を対象として生徒の五感を刺激することによって確実なものになります。感性をくぐった物質認識は理性的な物質概念の形成につながります。実験・実習は私たちが自然を知覚的に認識し、物質の世界を概念としてとらえることのできる「科学の方法」として確立されており、理科教育の重要な一部をしめています。
実験・実習のない理科教育はあり得ず、将来的にはさらに重要な項目になっていくと考えられます。実際多くの生徒は、実験・実習を通して自然や物質に興味と関心をもち、学習意欲を深めています。また、授業の進度とあわせての法則の確認や仮説の検証は、多くの生徒が感動的に受け止めています。これらを軽視することは、理科教育を単なる数値・現象の丸暗記にしてしまい、ますます「理科離れ」を助長することになります。
(2)理科実験・実習をすすめる障害
このように理科教育の基本であり、大切な柱である実験・実習は、科目の特性や授業の組み立て、野外実習の有無などによって違いがあるものの、年間授業時間数のうち最低15%〜30%程度を確保すべきと考えられます(95年理科連協アンケートより)。ところが現実には、受験競争の激化に伴って必要性を感じるほどには実験・実習ができないことが多くなり、具体的な自然や物質に目の向かない生徒や、実験・実習の初歩的操作さえできない生徒が増えています。
また、日本における理科実験・実習は、一人の教諭が1クラス40人を単位として指導することになっています。このような指導体制は、諸外国では考えられない劣悪な教育条件です。とても、行き届いた指導ができる体制ではありません。仮に、実験・実習の準備から後片付けまでのすべてを一人の教諭が行うとしたとき、20名程度の小規模講座なら可能な実験もあるでしょうが、その場合でも薬品管理にかかわることや持ち時間数、校務分掌の負担改善など多くの問題が解決されなければなりません。
(3)理科実験・実習をすすめる体制
理科実験・実習に際して、座学とのかかわりや季節・場所などを考慮して安全かつ効果的に行おうとすれば、機材の保守や柔軟な準備体制が必要です。これらを一人の教諭だけの体制でまかなうことは不可能です。現実は、「実習助手」が加わって初めて、実験・実習が可能になっているのです。また、実験・実習を行う際にも、教諭一人で安全にきめ細かい指導を行うことは困難であり、「実習助手」との複数体制が現実の姿です。そのことは、「定数法どおり『実習助手』が減になったらどうなると思いますか」(93年理科連協「実習助手」部会実施アンケート)という問いに、ほとんどの理科教諭が「実験がスムーズに進まず問題が多い」と答えていることでも分かります。「実習助手」は実験・実習をすすめるうえで重要な役割を担いながら、生徒にとって分かりやすい効果的な実験・実習ができるように研修を積み重ねて、実験・実習の専門家としての教育力量を高めています。教育実践として、「実習助手」と教諭とが協力・共同して教材開発を行ったり、実験指導にあたったりする取り組みが行われているところがありますが、このような実践は一部の先進的なところにとどまっていて、大きく広がるようにはなっていません。多くの職場で「実習助手」制度に起因する矛盾を抱えているのです。
[2]「実習助手」の制度問題と解決の方向
理科教育の実験・実習が抱えている課題を解決していくために、「実習助手」の制度問題の解決が不可欠です。
(1)問題に満ちた「実習助手」制度
@職務内容の不明確さ
「実習助手」の抱える多くの矛盾は、法的にその職務内容が明確に位置づけられていないことから起因
しています。比較の意味で「学校教育法」の中でどう扱われているかを、教諭と比べてみます。
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「助手」という差別的な職名も問題なのですが、法律の中で職務内容が「教諭の職務を助ける」というあいまいな位置付けになっているのがわかります。
このために仕事内容が教諭の考え方や計画に大きく左右され、職務の主体性が失われがちになって「仕事観」が持ちづらくなるなど、多くの問題が生じているのです。また、理科実験・実習には高度の専門性があるにもかかわらず、免許の有無も問われず、評価・評定にタッチしないという不当な扱いが多く見られるのも、さらには、週あたりの持ち時間数もはっきりせず過密労働がしばしば起こるのも、根本の原因はここにあります。そして、「児童の教育を掌る」教諭と違うということで、分掌配置や、本務でないとはいえクラブ顧問の配置などで、不本意な扱いが多くの学校で、校長から押し付けられているのです。
さらに、このことと関連して問題なのは、理科では職業科のように独立した実習科目がないため、「実習助手」は「実習を担当する教員免許状」を取得して教諭になることができないことです。このことが「実習助手」をより補助的な立場に固定化し、実験・実習の指導計画や方法に主体的にかかわることを、困難にしています。
教育職でありながら、より良い授業をつくり出すための努力が報われなかったり、生徒たちへの指導的なかかわりが否定されるような職種を置いておくことが、教育の場になじむでしょうか。民主的な人格を育てていく学校という場に「教諭の補助を仕事とする」といった位置付けがふさわしいかを、問い直さなければなりません。
A実態に合わない定数基準
@でのべた職務内容の位置付けのあいまいさは、定数法にも大きく反映しています。「公立学校の設置、適正配置および教職員定数の標準等に関する法律」によると全日制の高校では、24学級以下6学級までは、「実習助手」の定数が1名になっています。理科教育の現状を考えれば、この定数配置が妥当でないことは明らかです。
24学級以下になったとたんに、今まで4科目を2人で分担していたものが1人で4科目を担当したり、教科内の調整が行われるにしても、理科棟を走り回ることにならざるを得ません。実験が重なれば準備の大変さはもとより、教室に入って一人ひとりの生徒に行き届いた指導をするもの困難になり、安全面からもゆゆしき事態です。
こうした不合理な配置基準の根拠になっているのも、やはり「実習助手」の職務内容が法的に不明確なままになっているためと言わざるを得ません。
生徒減少の今日、24学級以下の学校が次々と出てくることを考えると、定数の改善を要求すると同時に、当面、府独自の施策で、とりあえず15学級程度以下までは複数配置を維持するよう要求していくことが求められます。しかし、こうした改善はあくまで一時的なものであり、根本的には「実習助手」制度そのものを見直さない限り、解決の展望は出てきません。
B低賃金問題 《賃金グラフ=略》
「教諭」と違うという法的扱いは、賃金制度の面にも反映しています。「実習助手」は、教育職(二)表一級を適用され、40歳代でワク外(地方では)となり、公務員の中でもとりわけ低賃金です。京都では長年の運動の成果として、「実習助手」の2級ワタリを勝ち取っています。しかし生涯賃金から見ると、まだ2000万円ほどの差があり、不十分さを残しています。ある意味では、教育を安上がりにするために矛盾に満ちた「実習助手」制度がつくられている面があることも見ておかなければなりません。同じ教育に携わる仲間の中に、こうした不当な低賃金で働く職種があることを認めていいはずがありません。
(2)根本的解決は教諭への一元化
賃金面でも教育実践面でも根本的な解決ができないのは、「実習助手」の法的な位置付けが制約になっているのです。理科の「実習助手」の置かれている現状を解決していく道筋を考えてみましょう。
私たちは、「実習助手」の問題を根本的に解決するためには、理科教育を理科免許をもった教諭で行うことを明確にし、「実習助手」制度を廃止して、教諭への一元化をはかることが必要と考えています。そのためには、次のような制度面での改革が必要です。
@「学校教育法」第50条を改正し、「実習助手」を廃止する。
A「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」を改め、少なくとも教諭の数を「実習助手」の数を合計した定数にする。さらに、実験・実習の準備や後片付けを含めた適正な持ち時間数に見合う人数や、複数指導体制がとれる人数に改正していく。
B理科の「実習助手」が教員免許状を取れる道を開き、一元化をすすめるとともに、現職者の条件や希望に応じた過渡的措置を講じる。
次に、教諭一元化のための法的筋道を考えましょう。
(3)教諭への任用替えのみちすじ
今後、新たな「実習助手」としての採用は行わず、理科教諭として採用するとともに、現職者に対しては、現在の免許法のもとでも、行政が必要な条件整備を行って、次のように「教諭任用制度」を導入し、理科教諭への一元化は可能です。一元化に伴い、「実習助手」の見合い分を含む理科の定数増を前提として、
@現在理科教諭の免許を持っている「実習助手」は、直ちに理科教諭に任用替えする。
A現在免許のない「実習助手」は、大学卒の場合、検定で特別免許を取り、ただちに理科教諭になるか、理科の単位取得、検定を経て理科の免許を取り、理科教諭に任用替えする。高卒、短大卒の場合は、検定で臨時免許を取り助教諭に任用され、基礎資格5年と45単位(注)の取得を経て、検定で免許を取得し理科教諭に任用替えする。*(注)在職期間年数×5単位、上限35単位は認められるので、残りを修得することになります。
この場合、一定期間中に所定の理科教育の単位が修得できるよう、行政機関が講習、公開講座、認定試験などを実施することや、必要な検定試験、認定講習・研修会などを行うこと、さらにそれらへの参加を保障し、教諭への円滑な移行がはかられることが必要です。これらの施策は、教育委員会が実施します。
また、現職者の条件や希望に応じた過渡的な措置を講じることによって、一元化に伴って身分上の不利益が生じないようにし、現職者が尊重される改善でなければなりません。
[3]理科実験・実習を充実させるために
(1)高校理科教育での科目としての「実験・実習」について
教諭一元化のもとで、職業科における「教諭(実習担当)」の例にあるように、理科に「実験・実習」科目を新設して、定数配置を行うという考え方ができます。とりわけ現職者の実情と要求を踏まえた制度問題解決の方法として、有力な方法と考えられます。しかし、高校での理科実験・実習の多くは、基礎的概念の形成を手助けする内容であり、その理解を前提とした大学での実験・実習とは、かなり位置付けが異なります。高校での理科実験・実習は、座学としての講義・演習などの進度と密接にかかわって行われることが大切であり、説明と実験・実習を組み合わせた展開の計画が重要です。この点で、「実験・実習」科目を独立させることには、困難があります。また、新たに独立した「実験・実習」科目を、窮屈なカリキュラム表の中に加えるのは、大変に難しいという問題もあります。
(2)複数指導体制の必要性
現在の高校理科の実験・実習では、教諭と「実習助手」との複数指導が多く行われていますが、「実習助手」は教諭の指導計画にしたがって準備や後片付けをしたり、実験室や野外実習の指導も「手助け」の範囲のものが大部分です。「制度改革法案」が審議された1984年の第101特別国会で、江田五月議員は「実験・実習の教育の中で、準備・後片付けを区分するのは誤りであり、準備・指導・後片付けを一体的にとらえ、実験・実習指導を考えるべきで、その意味から『実習助手』と『教諭』とに区別する必要はなく全て『教諭』にすべきである。」と発言しています。理科の実験・実習は指導計画から準備、直接指導、後片付けそして評価までの一連の授業過程を、複数の教諭で担当するほうが、部分的に職務を分担する方法より大きな教育効果が期待できます。複数指導には、「理科の教育観や実験観の違う教諭が複数で指導することは困難である。」「準備や後片付けを一方的に他の教諭に押しつけるようになる。」「教育内容の統制や教職員の管理につながる。」などの課題がありますが、今後の理科実験・実習を充実させるためには、教諭による複数指導体制が必要です。
(3)複数教諭による実験・実習の指導の展望
@年間指導計画の立案と指導案づくり
学習進度や実験・実習材料の準備、クラスの実態などを勘案し、複数の教諭が協議しながら年間指導計画や、個々の実験・実習の指導方法などをつくり、分担します。複数指導は、単に一つの教室に二人の教諭が入っているということだけではありません。年間指導計画や具体的な実験・実習計画をお互いに理解することによって、その後の分担も協力・共同して行うことができるようになります。
A教材開発
複数の教諭が教育内容を協議し共同して実践することを通して、教材に合った効果的な実験・実習の内容や方法を検討することができます。さらに、複数の教諭が経験を交流し、各自の教育観や方法論を話し合うことによって、新しい実験・実習の開発や研修の機会を常時もつことができます。
B準備・後片付け
生徒実験であっても演示実験であっても、実験・実習の準備は、目的達成のための重要な過程の一つといえます。教諭が協力して準備を進めることは、指導の方法や内容を意思統一し共通理解を深める機会になります。また、1時間の実験・実習のための準備や後片付けに要する時間は、1時間以上かかる場合も少なくなく、その労力は講義の1時間以上に相当する場合もあります。複数の教諭が協力し、分担して準備や後片付けをすることは、実験・実習の成果と問題点を明らかにする場となり、指導の効率化にもつながります。
C実験・実習の直接指導
複数の教諭による指導は、実験・実習の目的や方法を徹底し、間違った操作を適切に指導できるだけでなく、生徒の疑問・質問にも即答できます。複数指導体制によって、実験の効率化と生徒の理解を深めることが可能になります。また、実験室での複数指導体制は、危険を事前に予防できたり、適切な注意を与えるなど、一人の教諭では難しい内容を指導できるようになり、充実した理科教育が可能になります。
講義の過程で行う演示実験についても、危険を伴うものやダイナミックな演示など、一人では困難な実験もありますが、複数の教諭が担当することでそれも可能になります。このように、実験の複数指導は演示実験の可能性を広げます。さらに、フィールドワークでは、少人数に分けて指導・説明することができ、自然観察の効果を上げることができます。フィールドワークにおける危険防止などのためにも、教員による複数指導は欠くことができません。
D評価
評価は教育活動にとって非常に重要です。実験・実習における評価は、操作や技術について、さらに問いかけに対する反応やつまずきの発見などを行います。実験・実習の適切な評価は、複数の教諭によって可能になり、より確かな評価基準を設けることができます。また、実験・実習の適切さの評価は、提出されたレポート等で行われます。指導が適切であったかどうか、つまずきの原因は何か、実験・実習の過程や教授過程の評価なども、複数体制によってより優れたものになります。
このように、複数指導は、一人の教諭では諦めてしまう、分かりやすくおもしろい実験・実習を可能にし、現在私たちが抱えている実験・実習についての問題点と矛盾の解決につながります。
[4]今後の検討課題
以上「中間答申」として提起したことは、「はじめに」で述べたように検討委員会のこれまでの論議の到達点を整理したものです。「答申」の性格上、一定の方向性を示していますが、検討委員会としては、これを素材にした論議や学習が各校で活発に行われ、意見が集約されることを望んでいます。それらを踏まえて「最終答申」をまとめていきます。特に、次の事項は今後さらに検討を深めたいと思っています。
(1)複数指導体制での実験・実習指導について
(2)一元化に伴う現職者の過渡的措置と、移行の過程について
(3)この問題に関する教職員組合としての要求項目の整理 以上
◆◆具体的な展開例◆◆
[3]の(3)で取り上げた、教諭による「複数指導」について、具体的な持ち方の例を考えてみます。 教諭による複数指導を行うためには、現在の「持ち時間数」に、実験・実習を複数で行うための持ち時間を加えることができるように教職員定数の増加が保障されなければなりません。実験・実習の複数指導を含めた「持ち時間」は、下記の例示のように計算します。高校の理科教育においては、座学といわれる講義と生徒の実験・実習を分離することはできません。そのため、生徒実験・実習は複数で指導することにし、実験・実習を担当する時間を単位数の1/2程度に換算して持ち時間を計算することが必要です。理科教育は、生徒実験以外にも複数の教員で行う演示実験がありますが、このような授業ができるようにするためにも実験・実習時間を持ち時間に入れることが望まれます。
その持ち時間の計算方法の例を示すと次のようになります。 《以下、略》
[資料2]Q&A
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1997年4月
理科教育と「実習助手」問題検討委員会
理科教育と「実習助手」問題検討委員会は、96年7月に「中間答申」を提出し、各学校での論議を呼びかけるとともに、12月に理科教諭と実習職員を対象としたアンケートを行いました。121通寄せられた回答のうち、疑問や意見に対して検討委員会の現時点での考え方をお知らせします。
Q1 「実習助手」は教員になれなかった人のする仕事ではなく、独立した専門職です。現在の仕事内容から考えると、教員免許はなくても充分仕事ができると思います。
A1 独立した専門職としての法的な位置付けがなされていないことが、根本的な問題であると考えています。教育職でありながら、「教諭の職務を助ける(学校教育法第50条)」とされ、免許が必要とされないことから、待遇や定数の面でも、主体的に教育に携わる面でも、中間答申で詳述したような問題が生まれてきます。法的な制度上の保障がない限り、根本的な解決は望めません。教諭への一元化に実習職員個人として不安をもたれる方もある一方、今後も「実習助手」制度が存続することには大多数の方が反対で、根本的な改善を望んでいます。また、そのことが理科教育にとってもプラスになるのではないでしょうか。
Q2 教諭として一元化するより、「実習助手」のままで待遇、採用方法などを教諭並に改善し、職務内容をきちんとすればよいのではないでしょうか。
A2 職務内容を確立するには、法的な根拠が必要です。免許も必要とされず、法的にあいまいな位置付けをされたままで、賃金、職務内容、定数配置などを教諭並に改善することは、難しいのではないでしょうか。「実習助手」制度の問題は、部分的な手直しや改善で済むものではなく、教諭一元化による根本的な解決が不可欠であると考えます。
Q3 職業科で行われているような実習教諭制度ではいけないのでしょうか。
A3 理科に職業科で行われているような実習教諭制度を導入するには、実験・実習を理科の中の一つの科目として独立させることが、制度上必要です。しかし、高校での理科実験・実習は、“座学"の部分と密接に関わって行われることが大切で、そこから切り離して独立させることは、理科教育にとってマイナスであり、「実習助手」制度の根本的な矛盾の解決にもならないと考えます。
Q4 私のように短大の家政科をでたものに、理科教諭と同じことができるとは思えません。そのような中でも教諭一元化が可能なものでしょうか。
☆☆アンケート集計より☆☆ 《略》
A4 教諭一元化が実現すると、新たな「実習助手」の採用はなくなり、教諭だけの採用になります。京都では現在、理科「実習助手」の採用は幼稚園以上の教員免許の所有が条件になっていますし、全国的にもそのような流れです。
現行の教員免許法で、現職の「実習助手」が、学歴に拘わらず理科の教員免許を取得することは可能です。(例えば、高卒・短大卒の人の場合、検定で臨時免許を取得し助教諭として任用され、大学二部や通信大学で大卒資格を取るとともに、5年の経験と10単位程度の講習・認定試験で理科免許を取ります。)実際に岐阜県では、理科教員免許取得の道が教育委員会によって保障され、多くの「実習助手」が単位認定講習を受けています。このような免許取得の過程の中で、現職の実習職員が教諭として学校の中で位置付けられていくことを展望しています。
さて、現在理科の教員免許をもっていない実習職員は、理科の教員免許を移行期間中に取得することになります。その間は、「実習助手」制度が併存します。講習や検定など免許取得に必要なことが、無理なくすすめられるよう、条件整備を教育委員会に求めます。
また、「“座学"をどうしてももちたくない」、「担任やHRの指導はとてもできない」など、現職の実習職員が希望する場合には、「実験クラスだけを担当する理科教諭」を、校内の運用で保障したり、一元化の経過を踏まえた分掌配置がすすめられるように取り組みます。中間答申8ページの<具体例1>教諭ウ、<具体例2>教諭キは、この趣旨のものです。
検討委員会は、現職者の経過措置について、聞き取り調査を行うなど引き続き検討をすすめています。
Q5 一元化すると実質的に現在の「教諭」+「助手」より定数が減らされる(悪用される)可能性が高いのではないでしょうか。
A5 中間答申では、教諭一元化の運動方向として、法改正について次のように提起しています。
『@「学校教育法」第50条を改正し、「実習助手」を廃止する。
A「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」を改め、少なく とも教諭の数を「実習助手」の数を合計した定数にする。さらに、実験・実習の準備や後 片付けを含めた適正な持ち時間数に見合う人数や、複数指導体制が取れる人数に改正して いく。』
また、具体的展開例では、持ち時間数を16時間として、その中の平均約三分の一は実験・実習の複数指導の時間として、他の教諭の受け持ちクラスに入ったり、計画、準備・後片付けにあてる形を提案しています。当然、これが保障される理科教諭の定数が必要ですが、それは理科の単位数を1.5倍に換算して算出した定数であり、その数は概ね現在の教諭+「実習助手」の数を少し上回るものになります。
Q6 各学校により実験の回数が異なるので、持ち時間数だけでは判断できないのではないでしょうか。また、実験・実習の全体をつかんで調整することが難しいため責任が不明確になったり、教育観・生徒指導の観点などが違うために、評価の面でのしんどさが出てきたりして、実際には実験・実習がやりにくくなるのではないでしょうか。
A6 理科教育の大切な柱である実験・実習は、科目の特性や授業の組み立て、野外実習の有無などによって違いがあるものの、年間時間数の内、15〜30%程度が必要と考えられています(理科連協調査)。しかし、「教科書に追われて」「生徒の現状から見て」「手間がかかり余裕がない」「効果的な実験が思いつかない」などの理由で、必要と考えられるだけの実験・実習が行われておらず(アンケートでは約7割)、各学校や担当者で実験・実習の回数が大きく異なっているのが実情です。
教諭一元化は、「実習助手」制度を根本から解決することに加えて、実験・実習を正しく位置付けた理科教育をつくるための提案でもあります。年間指導計画づくり、教材開発、準備後片付け、評価などを複数の教諭で集団的に行うことにより、教育観や方法論を交流し、理科教育での実験・実習の位置付けを共通認識にしていくことで、経験の蓄積や実践力量の向上に結びつくものと考えています。もちろん、全体をつかんで実験室を調整する係や、薬品・備品の管理を事務部と協力してすすめる係など、各学校の実情に合わせた実際の展開の工夫が必要になりますが、集団的に解決できる課題だと考えられます。
Q7 中心とサブを明確にしておかないと、指導が統一されない。教諭同士では中心とサブの役割分担が難しいと思う。また、教科教育は自分の教育観で行うものであり、他の教諭に踏み込んでほしくない人があると思う。
A7 複数指導において、具体的な進め方はいろいろと工夫できると思いますが、メインの教諭(そのクラスの普通授業担当者)に、もう一人の教諭(実験・実習の時に入る)が加わって一緒に実験・実習指導にあたるというのが、当面は一般的な形態になると思います。しかし、中間答申でも述べているように、「年間指導計画の立案と指導案づくり」や「教材開発」「準備作業」などを共同で行うことで、実験・実習での新たな前進や発展が生み出されることも期待できるのではないでしょうか。生徒の学力の状況などに変化があれば、実験の内容もそれに応じて組み替えることが必要になりますが、実験教材を開発したり、実験を更新していくことは、一人の担当者で行うよりも、複数で考え実践するほうが豊かに進められると思われます。その意味で、各教諭一人ひとりの教育観を大切にするとともに、論議を十分に踏まえた共通部分での協力をすすめることが大切であると考えます。
Q8 表面的には理科教諭だけ持ち時間が大幅に減るので、他教科(体育・芸術・家庭など)の理解をどのようにとっていくのか。
A8 「理科教諭だけ持ち時間が大幅に減る」ことにはなりません。形態は違いますが、いくつかの学校で行われている「習熟度別授業」で、1クラスの授業を複数の教員が持ち時間数としているのと同じです。しかし、制度改革の中心になる学校教育法・「定数法」の改正をすすめるにあたって、他の教科はもちろん、全教職員の理解を得ていくことが、決定的に大切になります。検討委員会としては、理科実験と理科「実習助手」制度の改革として検討していますが、全体としての定数増・持ち時間数軽減や、実習の多い教科での労働条件の改善、また、教育条件の改善を、運動として旺盛にすすめなければなりません。わたしたちの検討は、このような運動の一領域として位置付け、要求のあるところでの奮闘と、共通のたたかいの前進のための交流と共同を、大切なものとして考えています。
そのためにも、「中間答申」やこの討議資料Q&Aを、各職場で大いに論議していただき、この問題での共通理解をはかるとともに、他の教科や職種での要求実現のたたかいとも相乗的に高めあえるように頑張りたいと思います。
以上
☆ご意見やご質問をお寄せください。
連絡先:理科教育と「実習助手」問題検討委員会
〒606 京都市左京区丸太町新道上ル 教育会館内
5 075-751-1645 Fax 075-752-2988