京都府教育委員会の「府立高校改革推進計画(案)」に対する見解

どの生徒にも豊かな高校教育を保障することを放棄した高校の「特色化」「多様化」とエリート校づくりではなく、本当に京都の子どもたちの未来をデザインし応援する改革プランづくりを!

2002年12月14日
京都府立高等学校教職員組合執行委員会

はじめに

京都府教育委員会は12月11日、「府立高校改革推進計画(案)」(以下「計画案」)を発表しました。今回は「計画案」の第1部として発表されたもので、第2部では生徒減少をふまえた高校の適正規模・配置、すなわち高校統廃合計画を来年度の策定に向けて検討をすすめるとしています。

1.府教委は府民や学校現場の声に耳を傾け、17年間の施策を総括すべきです

この間すすめられた府立高校改編の多くは、学科改編や学校のシステムそのものの変更を含む重大な改編でありながら、校内での組織的な検討を経て打ち出されたものではなく、上からの一方的なトップダウンで決められたものです。このような乱暴きわまりないやり方では、学校現場は混乱するばかりであり、教職員は学校改革への意欲を失うばかりです。
また、何よりも「高校再編」によって大きな影響を受けるのは、当該の学校に学ぶ生徒たちであり、これから高校に入学する子どもたちです。そして、地元の公立高校を支えてきた地域住民たちにとって、まさに「寝耳に水」の発表が続いてきました。府教委のこうした姿勢をすぐにあらためるべきです。
「計画案」の大きな特徴は、府立高校改革の基本的な方向性として、根拠もなく繰り返される「生徒の多様化論」をもとに「新しい多様で柔軟な教育システム」の導入をうたい、この間府教委がすすめてきた「特色化」「多様化」路線を無展望に加速化させていることです。この路線は、文部科学省が全国的におしつけている高校「多様化」政策を無批判に導入してきたものであり、学校現場の検討を重ねたものでもなければ、「高校教育の保障」を願う父母や子どもたちの願いに沿ったものではありません。したがって、1985年に現行の公立高校教育制度をスタートさせて以来、その施策の検証もなければ、施策を行った教育行政としての責任ある総括もなく、高校教育制度の矛盾を取り繕ってきた17年でした。
そもそも現行制度自体が、「特色ある学校づくり」をすすめ「能力を伸ばし個性が生かせる」として類・類型制度を設け、「学校の特色を選んで志願できる」(いずれも1984年6月「府教委広報」)として通学圏制度を導入したものです。ところが今回の「計画案」は、普通科の特色化や通学圏の拡大など、現行制度そのものをくつがえす方針を打ち出しています。
私たちがこれまで繰り返し指摘してきたように、現行制度は明らかに行きづまっています。その破綻を取り繕うために、「特色化」「多様化」を重ねることで、いっそうの被害を受けるのは子どもたちです。それを繰り返さないために、今必要なことは、17年間の京都の公立高校制度をきちんと総括し、京都の公立高校のあるべき姿について開かれた議論を行うことです。

2.「特色化」の名のもと、競争と選別をいっそう強化する普通科再編

今回の高校再編で大きな柱となっているのは、「普通科の特色化・多様化」です。
これは、普通科が「均一化している」(武田教育長)として、「多様な特色ある類型の設定」「類・類型間の移動をより弾力化」するとしています。高校に類・類型をおしつけ、みずから画一的な普通科をつくりながら、それを否定して「特色化」をとなえるという自己矛盾をおこすという無責任な態度です。明らかに類・類型制は行きづまっています。それを取り繕うため、「すべての学校に第Ⅱ類を置く必要はない。学校ごとに分担すればよい」(在り方懇話会まとめ・関連意見)という発想にもとづいて、「Ⅱ類校=進学校」と「Ⅰ類校=底辺校」をつくろうという、空恐ろしい構想です。
今、一部の府立高校では、「Ⅱ類校」として生き残るためのし烈な競争が展開されています。その中心は、国公立大学をはじめとした「難関大学への進学実績」をあげるための競争です。「国公立大学への進学校を目指す」「中核校をめざす」と公言し、その一方で、生徒たちが楽しみにしている行事が一方的に削られています。
こうした異常な競争の頂点に立つのが、洛北高校への中高一貫教育の導入です。その理由として、武田教育長は、「ノーベル賞受賞者ら多数の優れた人材を輩出」「交通が便利で広い範囲から通学できる」「多くの大学との連携が可能」ことをあげています。これは「エリート校」にすることをねらった導入であることをあからさまに語ったものです。そして、80億円余もの予算を投じて「最新技術を駆使した、高等学校として最高水準の新校舎」を建設している市立西京高校の中高一貫校と開設を競って導入を発表したものです。こうした「エリート校競争」をいっそう過熱させ、「特別の学校」をつくることは、多くの府民が願う学校づくりに真っ向から反するものです。
特定の学校に中高一貫教育を選択的に導入することは、京都市教委が「小学校でも進路指導をせよ」と言っているように、受験競争の低年齢化をまねき、小学校から子どもたちの中に「エリート競争」を持ちこむものです。すべての子どもたちに平等に教育を保障すべきという憲法・教育基本法にも反するものです。
「計画案」では、「より幅広い科目の中から選択できるよう」に、総合選択制や単位制への転換を打ち出しています。それならば、なぜ普通科で類・類型制をやめ、幅広い科目選択ができるようにしないのでしょうか。「特色化・多様化」を強調するあまり、もっとも高校改革で大切にしなければならない点を忘れているとしか思えません。

3.普通科べらしの総合学科・「新しいタイプの単位制高校」の設置

「多様で柔軟な教育システム」として導入を打ち出しているのは、総合学科と「新しいタイプの単位制高校」です。総合学科については具体的な数字をあげて、亀岡市以南の南部地域に2~3校、北部地域への増設を検討するとして、現在の1校を4~5校にする計画です。
総合学科は、文部科学省がすすめる「教育改革」の目玉としていますが、導入から9年目を迎えて、疑問視する声が高まっています。その一つは、総合学科の中途退学率が極めて高いことです。文部科学省の「2001年度生徒指導上の諸問題の現状」によると、普通科の中退率が1.9%であるのに対して、総合学科は3.1%となっています。すでに総合学科が設置されている久美浜高校でも、他の府立高校に比べて高い中退率となっています。
その背景には、学科内容のあいまいさ、単位制による履修と修得の区別の問題点などが指摘され、十分な教育条件が保障されないために「自分でつくる時間割」のうたい文句が実際には看板倒れになっていることが多いといわれています。広い通学区域の負担も軽視できない問題です。全国の総合学科や5年目をむかえた久美浜高校総合学科の検証や総括もないまま、地域の高校つぶしにつながる総合学科の拡大には反対を表明します。総合学科を安易に拡大するのではなく、現在の普通科・専門学科の教育条件をよくしていくことこそが、今求められることなのです。

「新しいタイプの単位制高校」は、「フレックス・ハイスクール」と名付けられ、各紙でも「自分ペースで授業選択」「高校生を時間から解放」と、改革の目玉として扱っています。「在り方懇話会まとめ」が述べている、午前・午後・夜間部などを併設した「多部制・単位制高校」とも性格のちがう学校としています。「1時間目から最大12時間目までの授業を準備」「学習時間帯を柔軟に選択」「弾力的な単位修得」等をうたい、限りなく「弾力化」された学校となっています。
私たちは、こうした学校には次のような問題点があり、安易な導入には反対を表明します。

(1) 他府県で設置されているこの種の学校の多くは、「どの子にも後期中等教育を」の立場を放棄し、生徒にどのような力をつけるかという教育理念を持たないまま、安易な単位認定で卒業させていく高校になっています。また、「自分のペースで学習できる」というふれこみで、「無学年制」の導入やホームルームが存在しない学校があり、生徒にとって大きな意味を持つふれ あいや集団活動を否定することにことになります。こうした高校教育の変質・解体につながる学校づくりには反対します。

(2) 「在籍者の90%以上が非就業者」という、定職以外を「非就業者」や「無職」とくくる不適切な資料を根拠に、定時制の役割が終わったかのようにして、定時制つぶしを合理化しています。定時制高校を順次募集停止し、3部制の市立総合高校に統合した横浜市では、大量の不合格者を出しています。こうした単位制高校の設置は、小規模な定時制高校のリストラにつながります。

(3) 変則的な授業形態のため、教職員が全員そろうことがむずかしく、生徒の把握も困難になって、学校全体の教育力が低下するおそれがあります。また、教職員には無定量の勤務を強いることになります。
今求められているのは、「柔軟なシステムを持った高校」をつくることではなく、さまざまな困難をかかえた生徒が安心して学べる、格差やランクづけのない地元の高校をつくることです。

4.子どもたちをいっそう競争の渦に巻き込む入試制度大改悪の計画案

入学者選抜については、いくつかの「改善の方向性」「主な検討事項」をあげていますが、入試制度の大改悪につながる、次のような重大な内容が含まれています。

(1) 「通学区域の改善」として、山城北・南通学圏の統合を明記し、京都市4通学圏の拡大をすすめるとしています。通学区域を際限なく拡大し、「地域の高校」を破壊し、生徒たちに遠距離通学を強いることになります。

(2) 「これまで以上に希望する高校を選択できる方法」への改善として、普通科における単独選抜の拡大などをうたっています。単独選抜が「高校の選択の拡大」につながらないことは、この間の推移を見れば明らかです。通学区域が拡大すればするほど、子どもたちを非人間的な「輪切り指導」に追いやり、不本意入学が増えるだけです。

(3) 受験機会の複数化をすすめるとして、「前期・中期・後期選抜」を検討事項としています。 さらに、「学力検査と報告書の比重の弾力化」「学力検査と報告書における教科間の傾斜配点」 「自己申告書の活用」「学校作成の学力検査問題の使用(独自入試の実施)」を検討事項とし ています。わかりにくい入試制度をますますわかりにくいものにし、子どもたちにとっては、 競争と選別の苦しみを何回も何回も経験させられる制度に他なりません。

(4) 「わかりやすく透明性の高い選抜方法」がいわれていますが、複雑でわかりにくい入試制度と不透明な推薦入試を拡大してきたのは府教委自身であることを忘れた、無責任なものです。

(5) 「不登校経験者や長期にわたる欠席生徒にかかわる特別選抜」が検討事項となっています。 私たちの基本的な立場は、希望するすべての子どもたちに高校教育を保障することであり、不 登校を経験した子どもたちでも、安心して高校で学べるようにできるように募集定員を確保することです。必要な場合には一定の配慮を行うことはあり得ますが、「特別選抜」が本当に高 校教育の平等な保障につながるのか、十分な検討が必要です。
全体として「少子化」といいながら、高校教育の機会の拡大を図るのではなく、いっそう競争と選別を強める方向を示しているのが特徴です。私たちは、子どもの数が減っている今こそ、希望する子どもたちが安心して高校で学べるような制度をつくりあげていくために、真剣な努力をすべきだと考えます。

5.府民と私たちの共同で真の府立高校改革をすすめましょう

「計画案」の基本は、根拠のない「生徒の多様化」「多様なニーズ」論にもとづいて、「個性」に合わせた多様な「特別な学校」をつくろうとするものです。こうした学校づくりは、真に子どもたちの個性を輝かせるものではなく、高校の「個性」に合わせることを子どもたちに押しつけるものです。私たちは、このような学校づくりには反対します。多くの子どもたちが望み、父母・府民が願うのは、高校入試の恐怖感や経済的な心配がなく、安心して通える地域の高校の充実を図ることです。子どもたちが期待する、人間的で豊かな高校生活と教育を保障する学校づくりです。私たちは、生徒・父母・住民と教職員が力を合わせてこうした学校づくりをすすめるための努力を重ねることを表明します。
こうした観点に基本に、私たち府立高教組は、京都教職員組合・京都市教職員組合・京都市立高等学校教職員組合と協力してつくった、「京都の公立高校改革プランへの私たちの提案-3つのポイント・6つのプラン-」を11月に発表しました。府民的な議論の中で、よりよい高校改革プランを練り上げていくことをよびかけます。広範な府民と私たちの共同で真の府立高校改革をすすめることを、ここにあらためて表明するものです。

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