2010年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解と要求

子どもたちの「学びたい」思いを受けとめ、希望するすべての子どもたちに豊かな後期中等教育を

2009年9月4日 京都府立高等学校教職員組合執行委員会

1.2010年度入学者選抜要項の概要

京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委、市教委)は、8月20日(市教委)、21日(府教委)開催の教育委員会で来春2010年度公立高校の入学者選抜要項と募集定員を決定し、25日付け朝刊で新聞発表を行いました。その概要は以下の通りです。

(1)募集総定員は1万5400人で、2009度募集に比べて全日制720人増、定時制・通信制は増減なしで、合計では720人を増やしました。公立中学校卒業見込数は、前年度より南部を中心に1060人増加して、2万1181人となります。公立高校の収容率は72.7%(前年度 73.0%)、全日制では過去最高の前年度と同じ68.0%になるとしています。

(2)全日制普通科は、京都市北通学圏では、鴨沂・北稜・洛西高校のⅠ類でそれぞれ40人増、嵯峨野高校のⅡ類(理数)を40人増、全体として160人増やしています。
京都市南通学圏では、洛東・東稜・洛水・向陽・日吉ヶ丘・塔南高校のⅠ類をぞれぞれ40人増、鳥羽高校のⅡ類(理数)を40人増、向陽高校Ⅲ類(体育)を募集停止し40人減、全体として240人増やしています。
山城通学圏では、東宇治・莵道・西城陽・久御山・木津・南陽高校でそれぞれ40人増(Ⅰ・Ⅱ類一括募集)で、240人増やしています。
口丹通学圏では、南丹高校Ⅱ類(文理)を募集停止し40人減、中丹通学圏では綾部・福知山高校でそれぞれ40人増(Ⅰ・Ⅱ類一括募集)で80人増やしています。丹後通学圏は、昨年度の募集定員のままでした。

(3)定時制の募集定員の変更はありません。

(4)その他の専門学科では、乙訓高校にスポーツ健康科学科(40人定員)を新設しました。

(5)選抜制度では、口丹・中丹・丹後通学圏において、①普通科Ⅰ類・Ⅱ類の一括募集、②普通科を第1志望とする場合は、第1志望の中で順位をつけて2校まで入学したい高校を希望できる、ように変更しました。また、他の学区から入学できる割合(一括募集にする普通科Ⅰ類・Ⅱ類の募集定員に対する割合)を口丹で20%以内、中丹・丹後で50%以内とし、現行のⅠ類・Ⅱ類を合計した割合をほぼ維持しました。

今回の選抜要項・募集定員には、子どもたちに豊かな高校教育を保障する上で重大な問題点があります。以下に私たちの見解と要求を明らかにするものです。

2.「定時制で学びたい」生徒の受け入れ枠を保障するのは教育行政の責任

第1の問題点は、この間京都市内定時制高校の募集定員を大幅に減らしてきた結果、3年連続で大量の不合格者を出したことへの改善の手だてが全くされていないことです。

そもそもこの原因は、2000年度には1000人あった京都市内夜間定時制の募集定員を今の440名の水準まで減らしてきたことにあります。それに加えて、経済危機が深刻になるなかで、授業料が安い公立高校定時制への希望者が増加しています。

私たちは、昨年に引き続き「京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会」の父母や府・市民のみなさんと共同して、「京都市内夜間定時制の募集定員増を求める請願署名」にとりくんできました。街頭署名行動では、定時制高校の卒業生の訴えに、高校生や青年が積極的に署名に応じてくれたり、「私も定時制で学びたい」という署名ビラには、多くの府・市民から反響があり、1ヶ月余の期間に7000筆を超える署名が寄せられ、府・市教育委員会へ提出したところです。

京都府・京都市両教育委員会は、「9月時の中学3年生の夜間定時制への希望人数を考慮して決めている。全日制の定員を増やすなど総合的に判断している」と答えています。にも関わらず、なぜ3年連続で(昨年度は58人)多くの不合格者を出しているのでしょうか。働きつつ学ぶ青年はもとより、少人数でゆっくりと家庭的に学べる夜間定時制を志願した中学生の思いや保護者の願いを考えれば、定時制への入学の門戸を狭めている府・市教育委員会の責任は重大だといわざるをえません。貧困と経済的格差が広がるなかで、後期中等教育のセーフティネットとして、定時制の果たす役割はますます重要になっています。後期中等教育を希望するすべての人たちに教育の機会を保障する場としての重要な役割をになっている定時制高校の募集定員には余裕をもたせるべきだと考えます。定時制をつぶして安上がりの教育をすすめようとする方向性には反対であり、京都市内夜間定時制の募集定員を少なくとも2006年度並にただちに戻すことを要求します。

3.深刻な経済危機が続く丹後通学圏の募集定員増の切実な声を無視

地域の経済状況がいっそう深刻になっている丹後通学圏においては、昨年度、父母・教職員・地元住民から募集定員増を求める大きな運動が起こりました。その結果、定員は増やさなかったものの、丹後通学圏で16人の積み増し合格を認めたことは、教育行政としての英断でした。来年度の募集定員についても「丹後通学圏の高校入試を考える会」から府教委に対して「京丹後市での普通科1クラス増やしてほしい」という要望書が提出されましたが、丹後通学圏の募集定員は昨年度と同じ水準です。

2月府議会の中で教育長は「…H20年度は…柔軟な対応を行うとともに、それをふまえてH21年度以降の募集定員を考えていきたい」と答弁しています。丹後地域の経済状況は、昨年度より深刻になっているとも言われます。そのもとで京丹後市地域の中学3年生は昨年度より約30人減少しますが、昨年度の16人の積み増し合格と昼間定時制入学生の急激な増加(昨年度より28人増)などの状況を考えると、京丹後市での普通科1クラス増を要望するのは当然です。

4.子どもたちをいっそうの競争に追い込み、学校間格差を拡大する入試制度改革

高校入試制度改革の実験場として先行している山城通学圏をはじめとする現在の高校入試制度についての分析と検証が十分なされないまま、北部の通学圏において高校入試制度が改変されたことは、次のような問題点をもっています。

(1)「類・類型制」の破綻を小手先で繕う「Ⅰ類・Ⅱ類の一括募集」
大学進学に特化した「専門学科」が増設されたことで、それを希望する生徒が増えたことや「7時間目授業」「土曜補習」が強制されるⅡ類をさける傾向が顕著になってきたことなどによる「Ⅱ類離れ」が加速しています。その結果、全府の少なくない高校で「Ⅱ類の定員割れ」が毎年連続して起こっています。北部においては単独選抜をしていることから、定員に満たないⅡ類をⅠ類から補充することができないため、普通科全体の入学者が減少する矛盾を引き起こしてきました。経済危機で公立高校への志願者が増え、公立高校への期待と役割が増しているだけに府民への説明責任が問われる問題となっていました。
その「Ⅱ類の定員割れ」を避けるための手段として導入されたのが、「Ⅰ類・Ⅱ類一括募集」です。そもそも導入当初から大きな矛盾をかかえながら維持されてきた「類・類型制」がその役割を終えた(破綻した)状況にあると言ってもおかしくありません。
進路を早い段階で固定化し、子どもたちを差別・選別する「類・類型制」は、直ちに廃止すべきです。

(2)いっそうの競争と高校間格差・序列化をすすめる制度
普通科を第1志望とする場合、その中で第1順位、第2順位の2校を志願できるように変更したことは、すでに6年前から導入されている山城通学圏での実態を見れば、次のような問題があります。
「行きたい高校へチャレンジできる」ことをうたい文句に導入されましたが、この制度により、学校間の格差が拡大し、序列化がすすみました。そうなれば、第1順位、第2順位の志望校の書き方は、塾などの指導もあり学校のランキング順に並ぶことになります。その結果、よりランキングが「上位」の学校が、より成績の「上位」の生徒を取れるしくみができあがりました。単独選抜でおこる「成績上位者の不合格者」を少しでも減らす目的や定員割れを防ぐ装置としても機能する面もありますが、北部の通学圏においても、より競争、学校間の格差、序列化が促進することが懸念されます。

(3)「人気がない高校」は再編・統廃合に
山城通学圏での経過からしても、通学圏拡大や入試制度改変の後には必ず高校再編・統廃合に着手することを警戒しなければなりません。現在すすめられている新自由主義的な「教育改革」のねらいの一つに、全体として教育への公費を極力減らし、効率的に投入することがあります。実質的に通学区域を広げ、学校選択の幅を大きくすることで学校を序列化し、「人気がない高校」は統廃合して、教育予算を減らすという手法が、京都でも全国でもとられています。

5.現行制度の破綻は明白、高校入試と高校教育改善のために次のことを要求します

私たちは、「希望する子どもたちに豊かな後期中等教育を保障する」という、公立学校として当然の責務を果たすために、当面次の点を中心に改善すべきだと考えます。

(1)高校入試制度の改善について

1. 通学圏の拡大や入試制度の多様化をやめ、格差の拡大に歯止めをかける「総合選抜制度」の復活と拡大を図ること。
2. 「前期特色選抜」を廃止すること。
3. 適性検査など一部の高校に生徒集めの「特権」を与える制度をただちに廃止し、推薦入試を実施する場合はその基準を明らかにするなど、入試の透明化・公正化を図ること。
4. 子どもたちの中にいっそうの競争を持ち込む入試制度を改善すること。
5. 長期欠席者の特別入学者選抜制度については、当面各通学圏に1校実施すること。また、実施校での努力を支えるための教育条件整備をすすめるとともに、すべての公立高校で受け入れられるよう早急に改善していくこと。
6. 高校入試制度問題を議論する場として、以前開催されていた「入試選抜協議会」を再開させ、入試改善に向けて広く意見を聞くこと。高校制度にかかわる検討委員会や懇談会には、教職員組合の代表参加と、現場教職員の意見を取り入れた施策をすすめること。

(2)高校制度と募集定員について

1. 矛盾が深まっている全日制普通科の「類・類型制度」を廃止すること。
2. 夜間定時制高校減らしをただちにやめ、府南部に夜間定時制・通信制課程を設置すること。定・通全体の募集定員を増やしたうえで学級定員を20人以下におさえるなど、定時制・通信制高校の教育条件整備に力をつくすこと。学校現場の意見を踏まえた定時制・通信制教育の将来展望を明らかにすること。
3. 大学進学に特化した特色ある「専門学科」を減らし、多様な進路希望に対応できる普通科を増やすこと。
4. 同一通学圏内の各高校での普通科クラス数のアンバランスを改善すること。
5. 北部での分校統廃合など、高校つぶしの計画策定はしないこと。

(3)就修学の保障と教育条件整備について

1. 「お金の心配をしないで学べる」ように高校授業料の無料化を実現し、給付制奨学金などの就修学援助制度を抜本的に充実し、教育費の父母負担を軽減すること。
2. 高校においても少人数学級を実施し、教育条件整備に力をつくすこと。
3. 不登校や障害など特別な課題をもつ生徒が安心して学べるよう、教職員の増員も含めた教育条件整備を早急にすすめること。

いま、日本でも世界でも「勝ち組・負け組」「自己責任」を強調する「構造改革」路線を見直そうという動きがすすんでいます。しかしながら、教育の分野では教育の「構造改革」と言われる「教育改革」が一層すすんだ結果、 国連「子どもの権利委員会」が2回にわたって日本政府へ勧告しているように「競争意識をあおる教育制度が子どもの成長をゆがめて」います。いま求められているのは、格差をいっそう拡大させることではなく、希望するすべての子どもたちに等しく後期中等教育の機会を保障することです。どの公立高校へ行っても、どの子にも確かな学力と発達を保障するという本来の高校教育を、地域の父母・府民と教職員が共同してつくりあげることが重要です。そのことを可能にする教育条件整備をすすめることこそ、教育行政に求められている重大な責任です。
私たち府立高教組は、多くの府民のみなさんと力を合わせ、民主的な高校制度確立と入試制度の改善のために、いっそう努力することを表明するものです。

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