2009年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解と要求

子どもたちの「学びたい」思いを受けとめ、希望するすべての子どもたちに豊かな高校教育を

2008年8月30日 京都府立高等学校教職員組合執行委員会

1.2009年度入学者選抜要項の概要

京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委、市教委)は、8月21日(市教委)、27日(府教委)開催の教育委員会で来春2009年度公立高校の入学者選抜要項と募集定員を決定し、28日に新聞発表を行いました。その概要は以下の通りです。

(1)募集総定員は1万4680人で、2008年度募集に比べて全日制120人減、定時制・通信制は増減なしで、合計では120人を減らしました。公立中学校卒業見込数は、前年度より南部は211人、北部は98人減少して、合計では309人減少して2万121人となります。公立高校の収容率は73.0%(前年度72.4%)、全日制では過去最高の68.0%(前年度67.6%)になるとしています。

(2)全日制普通科は、京都市北(新)通学圏では、山城高校・朱雀高校・桂高校・洛西高校・紫野高校の I 類でそれぞれ40人増、鴨沂高校 I 類で40人減、全体として160人増やしています。京都市南(新)通学圏では、中学校卒業者が減少することから東稜高校・洛水高校の I 類をぞれぞれ40人減、向陽高校 I 類を80人減らし、乙訓高校の I 類を80人増やすとともに、向陽高校 II 類を40人増、西乙訓高校 II 類を40人減、全体として80人減らしています。
山城通学圏では、西城陽高校・木津高校・南陽高校でそれぞれ40人( I ・ II 類一括募集)減らしています。また、城南高校と西宇治高校の再編で城南菱創高校となりますが、現在の募集定員を引き継ぎます。
口丹通学圏では、園部高校 I 類が40人減、中丹通学圏では福知山高校 I 類が40人減、綾部高校の II 類が40人減となっています。中学校卒業者が増加した丹後通学圏では、網野高校 I 類を40人増やしました。

(3)定時制の募集定員の変更はありません。

(4)職業系専門学科は、乙訓高校商業科を募集停止(80人減)し、京都すばる高校にビジネス探求科(40人定員)を新設、同じく会計科を40人増やしました。また、峰山高校の機械システム科と繊維デザイン科(それぞれ30人定員)を産業工学科に改変し、機械系統(30人定員)、デザイン系統(10人定員)にしています(20人減)。

(5)その他の専門学科では、京都八幡高校(南キャンパス)の学科改編で介護福祉(30人定員)、人間科学(30人定員)、日吉ヶ丘高校の現英語科が国際コミュニケーション科となります。

(6)総合学科では、南丹高校が20人定員を増やします。

(7)選抜制度では、現行の京都市4通学圏からを南北2通学圏に拡大し、 I 類において新たに前期特色選抜(募集定員10%)を導入、中期選抜での部活動・特別活動希望枠(募集定員20%)と合わせて30%の募集定員を通学圏を越えてどの高校でも志願可能にし、現行の総合選抜枠(地理配分)の募集定員を10%縮小、 II 類における募集定員の50%以内で通学圏を越えてどの高校でも志願可能にしました。
山城通学圏では、東宇治高校 II 類英語系において現行では単独選抜としているところを I 類との一括募集に変更しました。
定時制においては、一般選抜で学校の判断で面接を可能にし、二次募集では、全日制・定時制とも現行5教科を3教科にし、面接を加えたことが変更点です。

今回の選抜要項・募集定員には、子どもたちに豊かな高校教育を保障する上で重大な問題点があります。以下に私たちの見解と要求を明らかにするものです。

2.京都市内夜間定時制の定員増を求める世論を無視をすることは許されない

第1の問題点は、この間京都市内定時制高校の募集定員を大幅に減らし、2年連続で大量の不合格者を出したことへの改善の手だてが全くされていないことです。
2000年度には1000名あった京都市内夜間定時制の募集定員が、今年度の440名まで毎年のように減らされました。志願者数は500人前後とあまり変わっていないため、年々倍率は上昇してきました。
加えて2007年度には、京都市以南の山城地域には1校も定時制がないため入学希望者が多かった桃山定時制で40人減、伏見工業夜間定時制30人減、60人定員の洛陽工業定時制の募集停止で定員が130人も減らされ、42人もの不合格者が出ました。
2008年度入試ではさらに西京定時制10人減で、ついに市内夜間定時制全体の志願者は、1次の募集定員合計388人に対して436人と、史上初めて倍率が1倍を超えました。2次募集でも、76人もの大量の不合格者を出す事態となりました。
また、市教委は、昨年度入試より市立高校定時制の募集定員のうち半分を第2次募集で取ったことも不合格者を増やしている要因の一つです。これは、定時制を全日制の不合格者の受け皿にし、定時制を第1志望にする者にとってより狭き門としています。
私たちは、「京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会」の父母や府・市民のみなさんと共同して、「京都市内夜間定時制の募集定員増を求める請願署名」にとりくんできました。「私も定時制で学びたい」という署名ビラには、多くの府・市民から反響があり、1ヶ月余の期間に7000筆を超える署名が寄せられ、府・市教育委員会へ提出したところです。
働きつつ学ぶ青年はもとより、少人数でゆっくりと家庭的に学べる夜間定時制を志願した中学生の思いや保護者の願いを考えれば、定時制への入学の門戸を狭めている府・市教育委員会の責任は重大だといわざるをえません。貧困と経済的格差が広がるなかで、後期中等教育のセーフティネットとして、定時制の果たす役割はますます重要になっています。後期中等教育を希望するすべての人たちに教育の機会を保障する場としての重要な役割をになっている定時制高校の募集定員には余裕をもたせるべきだと考えます。定時制をつぶして安上がりの教育をすすめようとする方向性には反対であり、京都市内夜間定時制の募集定員を少なくとも2006年度並にただちに戻すことを要求します。

3.「地域の高校に行きたい」願いを可能にする募集定員か

私たちがこれまで再三にわたって指摘してきたように、ここ数年間、通学圏内の子どもが通う普通科の募集定員を減らし、いわゆる進学のみでシフトした「特色学科」の定員を増やしてきたことが、 II 類や「特色学科」の定員割れを引き起こし、普通科に本来入れるべき中学生がはじきだされるという問題を引き起こしてきました。また、経済的に困難な家庭が増えるなかで公立高校への志望者が増えていることも大きな要因となっています。
これまでも「他の通学圏より公立高校に入りにくい」といわれる現行の京都市北通学圏では、2008年度入試で211人(11.8%)の不合格者を、京都市の他の通学圏においても東通学圏94人(8.1%)、南通学圏162人(10.9%)、西通学圏89人(6.9%)の不合格者を生み出しました。
2009年度の募集定員について、京都市北(新)通学圏においては、中学生卒業者数減のなかで全日制普通科の定員を160人増やしています。これは、これまでの私たちの運動が定員減を押しとどめ定員を増やしたという側面と、北通学圏に志願者が集中することを予想した対策を講じたという側面があります。
一方で、京都市南(新)通学圏においては、中学校卒業者数減少に伴い、定員を全体として80人減らしています。特に山科・醍醐地域で、これまで鴨沂高校に通っていた人数分が加わることも考慮すると中学校卒業者数が減っているとは言え、洛東高校で定員を増やすことなく、東稜高校で40人減らしていることには疑問を抱かざるをえません。また、伏見区や乙訓地域における募集定員の増減がどのように影響するかも懸念されるところです。京都市・乙訓地域の通学圏拡大に伴い、これまで通えていた地域の高校に行けなくなることも予想され、その検証が求められます。
丹後通学圏においては、昨年度、京丹後市の公立中学校卒業見込数の減少分を上回る定員を峰山高校と網野高校のそれぞれで普通科の定員を1クラス分づつ計 80人削減しました。2009年度は、京丹後市の公立中学校卒業見込数が86人増加することから地元からもクラス数を増やしてという要望が上がっていました。それに応えて網野高校 I 類で40人増やしていますが、峰山高校の産業工学科が20人減となっており、中卒者増分を収容できず、希望していても地元の高校に行けなく、京丹後市外へ通わざるを得えない生徒が増えることが危惧されます。とりわけ北部地域では、通学に多大な時間と費用がかかり、経済的にも大きな負担となります。すべての通学圏において地元の高校を希望する受験生をなるべく多く受け入れることが公立高校に求められています。

4.子どもたちをいっそうの競争に追い込み、学校間格差を拡大する入試制度改革

高校入試制度改革の実験場として先行している山城通学圏をはじめとする現在の高校入試制度についての分析と検証が十分なされないまま、京都市・乙訓地域の高校入試制度が改変されたことは、次のような問題点をもっています。
(1)1通学圏・単独選抜を目指すもの
2通学圏への拡大および通学圏を越えて志願可能にしたことは、2通学圏としながらも実質1通学圏と同じはたらきをもたせ、また希望枠拡大で「単独選抜」への志向を強めるものになると言わざるをえません。この方向は、近くの高校へ行ける枠を縮小するとともに、子どもたち、教職員、学校をいっそう競わせ、学校間の序列化を加速させることになり、 I 類に残した「総合選抜」のもつ意味を薄めるものです。とりわけ「単独選抜」をとる II 類への影響は大きく、定員割れが起こる高校が増加するおそれがあり、そのため普通科全体の入学者数が減り、公立高校へ行きたくても行けない子どもが増えることも予想されます。また、中学生にとっては全通学圏21校の普通科 I 類・ II 類・Ⅲ類に加え、専門学科や単位制高校など膨大な「選べる高校」から選択することの困難や、中学校の進路指導もより複雑化、煩雑化することで、子どもたちも教職員も疲れ果ててしまうことも懸念されます。「行きたい学校を選べるのはぼくのことではなかった」と言う山城通学圏の中学生の言葉を教訓化すべきではないでしょうか。
(2)いままで行けた高校に行けない
それに加えて今回、南北2通学圏にすることはさらに重大な問題をはらんでいます。その一つは、現行の東通学圏と西通学圏が南北に分断されることで、現在の4通学圏ならば「総合選抜」にもとづく地理的配分で通学できた近くの高校へ行けなくなる生徒が生まれます。また、通学圏が東西に広がるために長距離通学や危険な道路の自転車通学を余儀なくされる生徒が多数出てくるという心配です。二つ目は、大学進学の実績を掲げる「専門学科」設置校が北通学圏に片寄っていることから、 I 類・ II 類においてもその学校に希望が集中し、南北の通学圏で新たな格差が生じる可能性が懸念される問題です。
(3)破綻している前期特色選抜
内申書と作文や面接で合否を判断する前期特色選抜は、山城通学圏と口丹以北の通学圏をはじめ他府県でも、不合格者が大量に出ることや客観性に欠けるという問題点が共通に指摘されています。他府県ではすでに取りやめたり、見直されはじめています。このようにすでに破綻済みの入試制度をなぜ京都市・乙訓地域にも導入する必要があるのか疑問です。
(4)通学圏拡大と入試制度改変は高校統廃合への一里塚
山城通学圏での経過からしても、通学圏拡大・入試制度改変の後には必ず高校再編に着手することを警戒しなければなりません。現在すすめられている新自由主義的な「教育改革」のねらいのひとつに、教育への税金投入を極力減らすことがあります。通学圏拡大と単独選抜拡大で、学校を序列化し、「人気がない高校」は統廃合し、教育予算を減らすというのが、京都でも全国でも起こっている行政の常とう手段です。
(5)学校間の競争と格差の拡大
京都市通学圏においては、すでに中高一貫や専門学科を増設することにより、実質的に全府から「優秀な」生徒を集めることが可能になっています。そのうえ、今回の通学圏の拡大と通学圏を越えた希望枠の拡大によって、「総合選抜制」を維持するとは言え、実質的には京都市・乙訓地域1通学圏に近づき、全体としては単独選抜がより強化される方向へすすむことが予想されます。このことにより、学校間の格差がより拡大し、より地域から切り離された公立高校へと変貌することが危惧されます。

5.「類・類型制度」の破綻は明らか

府教委が、「高校三原則」をつぶして「類・類型制度」を強行してから23年が経過しますが、十分な総括もないまま、高校入試制度「改革」や高校再編をすすめています。府高は、これまでも「類・類型制度」のもつ矛盾を明らかにしてきましたが、それは以下の点でもますます拡大していると言えます。

* 専門学科の増設により、 II 類の定員割れがいっそう顕著になっていること。
* II 類において人文系・理数系を併置している学校は少数で、多くが文理系に変わってきたこと。(中学校段階での文・理の選択にそもそも無理がある)
* 山城通学圏では、 I 類・ II 類の一括募集を認めていること。
* 単位制高校や総合選択制の高校では、「類・類型制がない」ことをセールスポイントとしていること。
* 2008年度より「教育課程特例校」として一部の高校で、 I ・ II 類の区別のないクラスを編成、授業を可能にしたカリキュラムを認めていること。
* 向陽高校のⅢ類を廃止し、乙訓高校に新たな専門学科を設置したこと。
* 府教委は、2008年度「指導の重点」のなかで、これまで強調してきた「学科、系統、類・類型別の…」という文言を削除したこと。

このように「類・類型制度」が破綻していることは明らかであり、「類・類型制度」の見直しを早急にすすめるべきです。

6.現行制度の破綻は明白、高校入試と高校教育改善のために次のことを要求します

私たちは、「希望する子どもたちに豊かな高校教育を保障する」という、公立学校として当然の責務を果たすために、当面次の点を中心に改善すべきだと考えます。

(1) 通学圏の拡大や入試制度の多様化をやめ、格差の拡大に歯止めをかける「総合選抜制度」の復活と拡大を図ること。山城通学圏の「バクチ」のような「単独選抜」入試制度をただちにやめること。「前期特色選抜」を廃止すること。適性検査など一部の高校に生徒集めの「特権」を与える制度をただちに廃止し、推薦入試を実施する場合はその基準を明らかにするなど、入試の透明化・公正化を図ること。子どもたちの中にいっそうの競争を持ち込む入試制度を改善すること。

(2) 山城地域の高校統廃合、北部での分校統廃合など、高校つぶしの諸計画やその計画策定をただちにやめること。子どもたちが安心して学べるよう、教育条件整備に力をつくすこと。

(3) 矛盾が深まっている全日制普通科の類・類型制度を廃止すること。一部で定員割れをおこしている大学進学に特化した特色ある「専門学科」を減らし、多様な進路希望に対応できる普通科を増やすこと。普通科での30人学級実現や多様な選択科目の保障など、教育条件の整備をすすめること。

(4) 夜間定時制高校減らしをただちにやめ、府南部に夜間定時制・通信制課程を設置すること。定・通全体の募集定員を増やしたうえで学級定員を20人以下におさえるなど、定時制・通信制高校の教育条件整備に力をつくすこと。学校現場の意見を踏まえた定時制・通信制教育の将来展望を明らかにすること。

(5) 長期欠席者の特別入学者選抜制度は、当面実施校での努力を支えるための教育条件整備をすすめるとともに、一部の学校まかせにせず、どの公立高校でも受け入れられるよう早急に改善していくこと。

(6) 同一通学圏内の各高校での普通科クラス数のアンバランスを改善すること。

(7) 総合選択制導入など普通科のシステム変更や学科改編などは、あくまで学校現場の自主的な議論と研究を尊重すること。教育委員会が高圧的に押しつけることがないこと。

(8) 高校入試制度問題を議論する場として、以前開催されていた「入試選抜協議会」を再開させ、入試改善に向けて広く意見を聞くこと。高校制度にかかわる検討委員会や懇談会には、教職員組合の代表参加と、現場教職員の意見を取り入れた施策をすすめること。

いますすめられようとしている入試制度「改革」の方向は、国連「子どもの権利委員会」の2回にわたる日本政府へ勧告の内容「競争意識をあおる教育制度が子どもの成長をゆがめている」にも逆行しています。私たちは、いっそうの競争原理の導入で「勝ち組」「負け組」を振り分けるという教育格差拡大の施策に反対していきます。いま求められているのは、格差をいっそう拡大させることではなく、希望するすべての子どもたちに等しく高校教育の機会を保障することです。どの公立高校へ行っても、どの子にも確かな学力と発達を保障するという本来の高校教育を、地域の父母・府民と教職員が共同してつくりあげることが重要です。そのことを可能にする教育条件整備をすすめることこそ、いま、教育行政に求められている重大な責任です。
私たち府立高教組は、多くのみなさんと力を合わせ、民主的な高校制度確立と入試制度の改善のために、いっそう努力することを表明するものです。

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