2004年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解

子どもたちを競争にかりたてる総合選抜つぶしと入試制度改悪をやめろ!父母・府民とともに子どもたちの豊かな未来と地域の高校を守る共同を広げよう!

2003年9月13日
京都府立高等学校教職員組合執行委員会

一、昨年度の募集定員を据え置き、山城通学圏で大がかりな入試制度改定

京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委・市教委)は、8月27日に来春2004年度公立高校の入学者選抜要項と募集定員を新聞発表し、9月1日付の公報に登載しました。その特徴は以下の点です。

(1) 募集定員は、全日制1万4670人、定時制980人、通信制280人で、いずれも前年度の募集定員を据え置きました。これは中学校卒業見込み数が前年度より10人しか減少しないためで、中学卒業生に対する公立高校の収容率は、前年度と同じ63%を維持するとしています。

(2) 京都市通学圏の動きは、北通学圏で100名の増(朱雀、北嵯峨、山城の北通学圏分の増員)、東通学圏では普通科は変わらず(鴨沂・北稜の増、洛北・洛東の減)、洛東の総合選択制導入分80名が増、さらに西通学圏が40名増(桂)となっています。郡部通学圏では、山城通学圏が80名減(莵道、木津)、口丹通学圏が全体で40名の減(亀岡40名増、南丹60名減、山城高校の亀岡分20名減)、中丹通学圏で40名減(綾部)となっています。

(3) 学科再編では、今春の南八幡に続いて来年度から洛東で普通科総合選択制を導入し、南丹では普通科Ⅰ類と商業系2学科を総合学科に再編します。久美浜・総合学科で20名減、大江・ソフト経済科で20名減、銅駝美工では現行の8学科を「美術工芸学科」に統合して20名の定員減が行われました。

(4) 山城通学圏では、通学圏の再編を含む以下の大がかりな入試制度の改定を強行しました。
①山城北通学圏と山城南通学圏を統合し「山城通学圏」とする。
②普通科の総合選抜制度を廃止し、Ⅰ類・Ⅱ類とも単独選抜を行う。
③前期・中期・後期選抜を実施し、「特色選抜」の導入と受験機会の複数化を行う。
④普通科 I 類・ II 類の一括募集を行う。

(5) 募集定員の100%を推薦入試で決定していた普通科Ⅲ類と銅駝美工、音楽の推薦枠を70%程度に戻しました。さらに学力検査の点数を1教科20点から40点にし、合計200点に改め、報告書の評定を2年の評定を加えた新たな算定方式を採用しています。

二、子どもたちをさらなる競争にかりたてる山城通学圏の入試改悪強行

今回の選抜要項における最大の特徴は、山城通学圏の入試制度改悪の強行です。私たちは、5月下旬に府教委が「府立高校改革の第一次実施計画の骨子」を発表したことを受けて、山城地域の入試「改善」に対する第一次見解を発表しました。その後の推移を見ると、この第一次見解の正しさが明らかになりました。

(1) 第1に指摘しなければならないのは、今回も山城地域が「実験場」になっていることです。
京都では1985年の高校三原則つぶし以来、入試制度改悪が常に山城地域で先行実施されてきました。例えば、2002年度入試から導入されたⅡ類の単独選抜は、何の検証も総括もないまま、翌年には京都市通学圏に拡大されました。こうした改定の一方で、京都市内を中心とした不合格者の増加や、山城地域におけるⅡ類の定員割れによる普通科全体の収容率低下の問題など、京都の公立高校入試には重大な問題が山積しています。こうした問題は、私たちがくり返し指摘してきたように、教育委員会の施策の失敗にあることは明らかです。今回の改定はこれに根本的なメスを入れることなく、更なる取り繕いを山城地域を「実験場」にすすめることに他なりません。府教委はこうした愚行を今すぐ改めるべきです。
さらに驚くべきことに、これだけ大がかりな改定であるにもかかわらず、中学校への説明が中学3年生の三者懇談や進路説明会がはじまる直前になってやっと行われる有様です。さらに選抜要項発表の時点で後期選抜の詳細すら決まっていないことを見ると、いかに今回の改定が綱渡り状態であるかがわかります。これでは生徒や父母、進路指導にあたる中学校の教職員にますますわかりにくく、「中学生が主体的に選択する」ことからほど遠い制度になることは明らかです。

(2) 第2には、単独選抜が何重にもセーフティネットをかけなければならないほど危険な制度で、府教委もまったく自信のない制度であることが明らかになったことです。
単独選抜とは、一定地域にある高校の募集定員の合計人数を合格者として決定する総合選抜に対して、学校あるいは学科ごとに募集し選抜する制度です。高校の序列化が進行し、学校の立地条件や通学条件などの環境の違いがあるもとでは、志願者が多い学校と少ない学校が必然的に出てきます。多数の不合格者が出る一方で定員割れの学校が出る、きわめて危険な選抜制度です。
今回の改定では、単独選抜がもつ危険性への批判をおそれて、数々の「セーフティネット」をかけています。一般入試にあたる中期選抜では、「第3順位まで希望が可能」とし、さらに第3順位以外に「(定員を満たしていない高校なら)どの高校でもよい」という志願もできます。受検生が書いたものはすべて「希望」とし、「希望なら文句なし」とする制度に他なりません。公立高校に入学するためには、希望しない学校まで「希望」させる、文字通り「希望」を強制する制度です。これが府教委のいう「希望する高校を選べるシステムづくり」とするならば、余りにも自信のないシステムといわなければなりません。従来にも増して「不本意入学」を増大させることにつながりかねません。
また「受験機会の複数化」が、あたかも学校選択の機会が拡大するかのように描いていますが、「不合格になる機会の拡大」にもつながります。前期・中期・後期の三度にわたって不合格を経験することがあり得る制度です。15歳という時期にこうした経験すること自体、きわめて非教育的といわざるを得ません。
それより高校入試の不安をなくして、安心して高校に入学できるようにすることこそが大切なのではないでしょうか。その点から考えると、総合選抜制度自体がセーフティネットであり、総合選抜つぶしによってかえって総合選抜制度の優位性が鮮明になったといえます。

(3) 第3には、普通科の「特色づくり」と類・類型の弾力化が、「Ⅰ類校」「Ⅱ類校」の固定化=高校序列化に他ならないことが明らかになりました。
前期の「特色選抜」は、「各高校がその特色を示して生徒を募集」するとしています。各府立高校が示した「特色選抜資料」では、多くの高校が「求める生徒像」として「学習や部活動にとりくむ生徒」を示しており、大差のないものとなっています。しかし一部には、自校を「進学校」であると明示したり、Ⅱ類とⅠ 類の求める生徒像を明確に分けてⅡ類の進学志向を強調する学校もあります。さらにⅡ類の「目安となる定員」で、一部の高校が従来のⅡ類を超える人数を設定し、「Ⅱ類校」を志向する意図を示しています。「Ⅰ・Ⅱ類の一括募集」が、「Ⅰ類校」「Ⅱ類校」の固定化=高校序列化を促進するものであることは明白です。
この間公立高校ですすめられてきた「特色づくり競争」の実態は、ひたすら「難関大学への進学実績」を競うものとなっており、Ⅱ類を中心とした大学進学偏重のあり方に疑問の声が高まっています。また、「重点クラブ」を指定し優遇する動きも見られます。「特色選抜」が結局は「成績の良い生徒の早期確保」になり、府教委のいう「多元的な価値尺度による選抜」は、ただのかけ声にすぎません。「進学」などに優れた特定の生徒だけを集める方向は公立高校のあり方を逸脱したものであり、批判されるべきです。
普通科の「類・類型制度」は明らかに破綻しています。府教委が「類・類型の弾力化」を言うならば、それを高校序列化の方策に使うのではなく、新たな普通科づくりに対する各学校の自主的な議論やとりくみを保障すべきです。

(4) 第4には、通学圏の拡大が多くの子どもたちに遠距離通学を強い、地元の高校に行けなくなることすら起こるということです。
遠距離通学による弊害は、生徒の身体的負担や家族の経済的負担はもちろん、生徒の日々の学習や自主的活動への影響などが予想されます。通学圏の統合が「学校選択の幅の拡大」を名目にしていますが、競争を前提とした「学校選択」である以上、どの子にも平等に選択が保障されることはあり得ません。成績の高い生徒ほど選択の幅が広く、低い生徒ほど選択できない制度になることは当然のことです。これまでは地理的条件で地元の近くの高校に通えていた場合でも、それができなくなる可能性があります。
子どもたちや家庭の負担を少しでも軽くし、「近くの高校に安心して通いたい」という願いを踏みにじる通学圏の拡大には反対します。

三.これでは昨年の大幅募集定員削減のツケをカバーできない

府教委・市教委は、今春入試で820名という近年にない大量の募集定員削減を行いました。私たちは、昨年の見解で「募集定員の大幅減が不合格者を増加させ、多大な困難をもたらすことになるのは明らか…」と警告しました。
今春入試では、不幸にもその警告通りの結果となり、受検生や父母・保護者に大きな衝撃が走りました。異常な突出となっているのが全日制普通科の京都市4 通学圏で、多数の不合格が出た2001年度を上回る1038名の不合格者が出ました。受検者あたりの不合格率は、北通学圏で18.5%となり、5.4人に 1人が不合格になるというきびしい状況でした。その他の通学圏でも、山城北通学圏65名(前年22名)、山城南通学圏91名(同2名)、中丹通学圏181 名(同142名)、丹後通学圏61名(同27名)と軒並み不合格者が増加しています。
さらに市内定時制・通信制でも、桃山・西京の普通科は一次募集で定員が一杯となり、二次募集では鳥羽で残定員の2倍を超える志願者が殺到しました。朱雀高校通信制では、募集定員をはるかに上回る347名(編・転入学含む)が入学し、在籍生徒数も収容能力を上回る1725名となりました。
今回はさすがに募集定員を前年度と同数に据え置いており、切実な要求の反映といえます。しかしこれで問題が解決するわけではありません。今春入試で「15の春」に泣いた多数の子どもたちを再び生み出さないためにも、820名の募集定員削減の責任が厳しく問われるべきであり、競争と選別を土台とした今日の入試制度を根本的に改めることが求められています。

四.小学生に激しい受験競争を持ち込み、エリート校をめざす洛北・西京の中高一貫教育

府教委は3月に確定した「府立高校改革推進計画」にもとづいて各学校に学科再編や新しい教育システムの導入をすすめており、公立高校入試に新たな問題が生まれています。

(1) 来年度から洛北と西京に中高一貫教育が導入されるのにともない、併設の付属中学校で生徒を募集します。その選抜要項では、「報告書、面接及び作文・製作の結果を資料とし、これらを総合的に判断の上、抽選を用いる等の方法により合格者を決定」(洛北)などとしています。西京では「高い適性のある生徒は、抽選なしに半数程度を合格させる」とし、洛北も同様の意向といわれます。これは成績のいい子を優先的に合格させることであり、「学力検査はしない」といいながら、こうしたやり方で露骨に「エリート校」をめざすものです。これは「受験競争の低年齢化」を危惧した中教審の第2次答申すら逸脱したものであり、小学生の中に激しい受験競争を持ちこむ以外の何ものでもありません。西京高校の校長は、説明会で「(エンタープライジング科は)大学進学のみをめざす全国で唯一の学科」と強調し、校舎の全面改築には破格の99億円をかけています。こうした「特別の学校」を作るという発想が公立学校に持ち込まれることに強い憤りを感じるものです。

(2) 口丹通学圏では、南丹の普通科Ⅰ類と商業系学科が総合学科に改編されました。総合学科が本当に今求められている学科か、5年を経過した久美浜・総合学科の検証も含めて行うべきですが、府教委の姿勢はただ文部科学省の示す「高校再編」を忠実にすすめることのみに終始しています。同時に、亀岡地域での総合選抜つぶしと口丹通学圏の高校序列化をすすめるものであることを指摘しなければなりません。洛東の総合選択制導入は、教職員全体での十分な検討もなく強引に行われているのが実態で、多くの場合、学科改編等が高校統廃合がらみの圧力で強引に押しつけられているという重大な問題があります。府教委はこうした姿勢を直ちに改めるべきです。

(3) 推薦入試では、3年前に100%とした普通科Ⅲ類の推薦枠を70%にしています。私たちは昨年の見解で「不透明さ、不公正さが指摘され、該当校の教職員にすら情報公開されていないⅢ類の推薦入試の抜本的改善を図ること。当面、推薦入試を100%から50%程度に戻し…」を要求しました。こうした批判に一定応えざるを得なくなっているのが実態です。

五.押しつけの「高校改革」をやめさせ、地域の公立高校をみんなの力で守りましょう

いま府教委は、次の高校再編計画の策定とあわせて、高校べらしの統廃合計画を検討しているといわれており、京都の教育全体が重大な岐路に立たされてます。近隣府県では「20の府立高校つぶし」(大阪)、「43の県立高校を33校に再編」(奈良)など、大規模な公立高校つぶしが強引にすすめられています。
今公立高校に求められているのは、一部の高校の「エリート化」を図り、子どもたちの中にさらなる競争を持ち込むことではなく、希望する子どもたち全員に高校教育を保障することです。どの高校でも安心して学べるよう、30人以下の少人数学級を実現して、基礎学力の充実と選択を保障して希望の進路を実現できる高校を作ることです。かけがえのない公立高校を、1校の統廃合も許さず、地域の高校として守り育てることが必要です。そのためにも、府教委がおしつける上からの「高校改革」ではなく、教職員と子ども・父母・府民の願いにもとづく改革をねばり強くすすめることです。
私たち府立高教組は、多くのみなさんと力を合わせ、民主的な高校制度確立のために、いっそう努力することを表明するものです。

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