2003年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解

全日制普通科・定時制べらしをすすめ、「府立高校再編」を先取りする募集定員では、京都の子どもと教育の未来はありません。今こそ地域の高校を守る共同のとりくみを発展させましょう。

2002年8月31日
京都府立高等学校教職員組合執行委員会

一、これだけ募集定員を減らしてどうするなのか!~820人の大幅な定員減~

京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委・市教委)は、来春2003年度公立高校の入学者選抜要項と募集定員を、8月23日に新聞発表しました。その特徴は以下のような点です。

(1) 中学校卒業見込み数が前年度より1538人減少することを理由に、全日制で720人、定時制で100人の合計820人という、大幅な募集定員減を行いました。全日制の定員減 はすべて普通科で、普通科を設置する府立高校43校中17校に及ぶ大規模なものです。学校別で見ると、鴨沂・嵯峨野・洛東・向陽・東宇治・莵道・城陽・西城陽・八幡・田辺・南 陽・亀岡・南丹・須知・福知山・西舞鶴が1クラス減(各40人)。南八幡は、従来の普通科2クラスが普通科総合選択制に変更となっています。中学卒業生に対する充足率は、今年度より0.6ポイント上がって58.0%となるとしています。

(2) 定時制の募集定員は、洛陽工業と伏見工業の機械科がそれぞれ40人減、西京が20人減となっています。この結果、充足率は0.1ポイント下がって3.9%となるとしています。

(3) 総定員は1985年に現行の選抜制度になって以来最少を更新し、1万5930人となりました。全体の充足率は61.9%となり、今春より0.5ポイント上がるとしています。

(4) 専門学科を中心に校名変更を含む大がかりな学科改変が行われたのも大きな特徴です。

①商業系学科では、府立商業から校名変更する京都すばる高校が、会計学科・企画学科と情報科学科に再編され、定員を80人減らしました。また、西京商業から校名変更する西京高校は商業系学科を全廃しています。全体では360人の定員減となっています。

②農業系学科では、綾部高校東分校の農業・園芸と農芸化学で合計20人減、水産系の海洋高校は「海洋学科群」としての募集になり、海洋科学・海洋工学・海洋資源への学科改変と20人の定員減を行っています。

③「その他の専門学科」では、嵯峨野・京都こすもす科の自然科学系統が40人増、新設の西京・エンタープライジング科が200人、堀川の人間探究科・自然探究科を「探究学科群」に変更し、いわゆる「くくり募集」に変更しています。

④南八幡高校の普通科を「類を設定しない普通科」である「総合選択制」に変更し、山城南・北通学圏からの募集に変更しています。

(5) 5月に発表された京都市4通学圏普通科 II 類の選抜方法の変更が盛り込まれています。総合選抜をやめ、受検生が希望校を2校まで選べる「単独選抜」に変更しました。また、紫野・ III 類英文系の募集制限を廃止し、京都市通学圏全体に広げています。丹後通学圏では、普 通科 II 類の希望枠の制限を廃止して100%としました。

(6) 普通科 II 類の人文・理数系から文理系への類型変更も大がかりに行われました。該当校は 北嵯峨・堀川・北稜・日吉ヶ丘・塔南・向陽・網野の7校です。

二、子どもたちを苦しめ、「高校つぶし」の地ならしをする全日制普通科と定時制べらし

募集定員の最大の特徴は、近年になく大幅に募集定員を減らしたことです。

この間府教委・市教委は、中学卒業者数の減少にあわせて機械的に募集定員を減らしてきました。1999年度以降だけ見ても、中学卒業者数減少分の5~7割余りにおよぶ定員減となっています。しかし、公立高校の充足率が数字上は上昇したにもかかわらず、不合格者数は年々増加し、2001 年度入試では、不合格者は京都府全体で2千名を超え、京都市4通学圏の全日制普通科では967名という大量の不合格者が出ました。

今春2002年度の募集定員では、中学卒業者350人の減に対して60人と、募集定員減を低くおさえています。これは子ども・父母・府民の要求にもとづく私たちや父母のとりくみにある程度応えざるを得ないことを反映したものです。ところが今年は、こうした方向をかなぐり捨てて、再び「十五の春を苦しめる」方策を強力にすすめることを明確に示したものです。長びく深刻な不況と保護者の世代の雇用不安が高まる中で、公立高校しか選択できない中学生が増えていることが中学校現場からは報告されています。募集定員の大幅減が不合格者を増加させ、多大な困難をもたらすことになるのは明らかです。また、全日制普通科の定員減720人のうち、600人は I 類の減です。主として地元の子どもたちが通う I 類を減らすことは、「地域の高校」の破壊につながります。

一方、大幅な定員減となった普通科とは対照的に、全日制普通科以外の専門学科等の募集定員全体は昨年と変わっていません。とくに普通科を減らして京都こすもす科を1クラス増やした嵯峨野、新たに「エンタープライジング科」を設置した西京など、府内全域から生徒を募集する「特色学科」に力点をおいた方向をますます強めています。

定時制でも近年にない定員減となっています。年々深刻となる定時制入試は、今春はいっそう厳しい状況になりました。一次入試の競争率は過去十年で最高となり、桃山高校定時制では普通科・商業科とも一次募集のみで定員が満たされました。二次入試でも残定員を上回る志願があり、多数の不合格が出ています。定時制の「狭き門」に受検すらあきらめてしまった子どもたちが多数います。近年入学者数が急増している朱雀高校通信制では、募集定員 160名に対して新入学生・転編入学者を合わせると439名で、今年度も在籍生徒数が1千8百名を超える状態はまったく改善されていません。

このような事態を考えた時、定時制の募集定員を減らす状況にないことは誰が見ても明らかです。さらに、今回定員減となった洛陽・伏見・西京とも、今春の入試では募集定員に近いかそれを上回る志願者があり、定員を減らす合理的な理由はまったくありません。今求められているのは定時制・通信制の教育の充実であり、様々な事情で入学した生徒たちにゆきとどいた教育を保障することです。

さらに重大なのは、今回の全日制普通科・定時制べらしの募集定員が、府教委のねらう府立高校つぶしの地ならしを行っている点です。本年1月に発表された「府立学校の在り方について(まとめ)」では、府立高校の適正規模として普通科単独校は「1学年8学級程度」と勝手に決めつけ、府立高校の「大半は均一化している」(武田教育長)として大幅な普通科べらしと「特色化」をうたっています。また、定時制・通信制でも、「多部制の新しいタイプの高校設置」や「全日制と定時制の併設解消」を打ち出しており、府教委はこの「まとめ」に沿って府立高校の再編整備計画を立てているといわれます。今回5 クラス規模の小規模高校を作る一方、傍らに9、10クラスの大規模校を置くという、「1学年8学級程度」という「適正規模」すら無視した措置をとっています。こうしてみると、今回の募集定員が全日制普通科べらしと高校統廃合、さらに夜間定時制つぶしを推進する再編統合計画の一翼を担う危険なものであることは明白です。

三、総合選抜つぶしと「入試制度大改悪」をいっそう推進する単独選抜の拡大

第2の大きな特徴は、今春入試で山城北・南通学圏で導入された普通科 II 類の単独選抜を、京都市通学圏にも拡大したことです。

この単独選抜が子どもたちを苦しめ、現在の高校教育制度の矛盾をいっそう深めるものであるかは、山城北・南通学圏の入試結果を見れば明白です。

(1) II 類は第2希望まで記入できることになりましたが、第2希望で入学した生徒は十人前後しかなく、2000年度入試で82人、01年度42人と減少傾向にあった山城通学圏全体の II 類の定員割れが、58人と再び増加に転じています。

(2) II 類定員割れの穴埋めとして、 I 類でその定員を超える33人を合格させています。多くの41人学級をつくることになり、 I 類の教育条件を悪化させています。

(3) 南北通学圏合わせて24人が不合格になっています。類別入試をとらなければ希望者のほ ぼ全員を収容することができたことになります。

府教委は単独選抜導入の理由として、中学進路担当者に「 II 類の定員割れをなくするため」と説明していましたが、まったくのこじつけであることが明らかになりました。私たちは、単独選抜の導入・拡大が次のような危険な本質を持つことをあらためて警告します。

第1に、 II 類への単独選抜の拡大が、 I 類の総合選抜つぶしにつながり、他府県で見られるような学校間格差の拡大と高校の序列化をすすめることです。

第2に、「2校まで希望できる」「学校選択の拡大」という名目で、子どもたちの中にいっそうの競争とふるい分けを持ちこむものであることです。「選択の自由の拡大」が、多数の子どもたちには「振り分けて輪切りにされていく『自由』の拡大」に他ならず、教育にいっそうの競争主義をもちこむことにほかなりません。

第3に、公立高校に押しつけられている異常な「特色づくり」競争にいっそう拍車をかけることになり、それが高校教育をさらにゆがめていくことです。

そして第4には、山城通学圏や市内通学圏への単独選抜導入が、高校再編と直結したものであることです。すでに京都の公立高校には、学校規模や教育条件などの学校間格差が拡大しています。単独選抜が公立高校の「二極化」を固定化させ、「人気のない高校」を統廃合していく地ならしを行うことに他なりません。

四、類・類型制度の破綻がこれほど明白になっても、しがみつく府教委

第3に指摘しなければならないのは、1985年に導入されて以来17年を経過した類・類型制度の破綻が、いよいよ明白になったことです。

今回、大幅な II 類の類型変更が行われましたが、すべて人文系・理数系から「文理系」への変更です。南八幡高校の普通科総合選択制では、類・類型そのものをなくさざるを得なくなっていることは、類・類型制度の破綻を象徴するものです。また一部の専門学科でも、学科別募集をやめて学科群による「くくり募集」が拡大しています。

私たちは、類別入試の問題点とともに、 II 類が入試時点で類型に分けられていることがさまざまな問題を持っていることを指摘し、 II 類の類型別募集をやめるよう要求してきました。また、中学校現場からも「中学3年の時点で文系・理系を決めることは困難」という声が出され、進路の早期固定が子どもたちの成長・発達から見て大きな問題があることが指摘されてきました。その点から考えれば、遅きに失したとはいえ、「目的意識を高める」という理由で強化されてきた類・類型制度が手直しされることは、きわめて重要な意味を持つものです。

私たちは、府教委・市教委が、これだけ破綻が明白になった類・類型制度にしがみつくことをやめ、学校現場の自主性と教職員の民主的な研究と議論によって、子ども・父母・府民の期待に応える学校づくりを励ます立場に立つことを要求します。

同時に府教委・市教委には、マンモス校解消や入試選抜の抜本的改善を求める声に応えようとする姿勢がまったく見られないことです。私たちは、次の点を緊急の課題として改善するよう、改めて要求します。

(1) 30学級前後の大規模校をおく一方で小規模校の学級数をさらに減らすようないびつな配置をやめ、マンモス校の解消と教育条件の改善に努めること。

(2) 類・類型別募集を直ちにやめ、公立高校全日制普通科に入学を希望する子どもたちの希望をいかす入試制度に改めること。総合選抜制度廃止を撤回すること。

(3) 問題点の多いバス停方式などの不明朗な制度を廃止すること。

(4) 不透明さ、不公正さが指摘され、該当校の教職員にすら情報公開されていない III 類の推薦入試の抜本的改善を図ること。当面、推薦入試を100%から50%程度に戻し、選考基準を明らかにするなど、公正さの確保に努めること。

五、府民の疑問に応えず、保護者の不安を高める「内申書」問題

今回、中学校での絶対評価導入にともなって、「入試の内申書に保護者の不安が残っていることから、決定方法などに対する理解を深めてもらう狙い」(京都新聞)で、合格者の決定方法を初めて公開しました。しかし、父母や府民の中にいっそう不安や疑問を広げるものになっています。

第1に、今回導入された絶対評価が、「関心・意欲・態度」などを重視する「新学力観」と観点別評価と結びつけて出されていることが最大の問題です。観点別評価そのものが教育をゆがめ、正しく学力を評価することや評定の客観性に大いに疑問を抱かせるものであることです。第2に、「観点別評価にもとづく絶対評価の内申書で入試の公平さが確保できるのか」という疑問にはまったく答えていないことです。第3に、公立高校の入試制度自体が複雑で、わかりにくい制度であることがまったく変わっていないことです。第4には、「報告書の必修教科の評定以外の記載内容を総合的に判断」「報告書の記載内容及び学力検査の成績を総合的に判断」(入学者選抜要項)など、依然としてあいまいな部分を残し、入学者決定の客観性を薄めていることです。

私たちは、以上のような点から、評定の客観性に問題のある観点別評価をやめ、客観的・公正な評定になるよう努力すること、そのための行政の説明責任を果たすことを要求します。

六、おしつけの「教育改革」「高校改革」ではなく、子ども・父母・府民の願いにもとづく真の教育改革で公立高校を守りましょう

いま府教委は、「府立学校の在り方懇話会」が打ち出した高校統廃合と、「特色づくり」の名による高校の「種別化」「差別化」をすすめるための高校再編計画を策定しています。今秋にもその計画が明らかにされると言われており、公立高校のみならず、京都の教育全体が重大な岐路に立たされてます。

公立高校が「難関大学への進学実績向上」を追い求め、「特色づくり」「生き残り」競争に血眼になる今日の状況は、多くの府民には異様な姿として映り、このような公立高校のありかたを疑問視する声が高まっています。今公立高校に求められているのは、一部の高校の「エリート化」を図ることではなく、希望する子どもたち全員に高校教育を保障することです。どの高校でも安心して学べるよう、30人以下の少人数学級を実現して、基礎学力の充実と選択を保障して希望の進路を実現できる高校を作ることです。かけがえのない府立高校を、1校の統廃合も許さず、地域の高校として守り育てることです。そのためにも、府教委がおしつける上からの「教育改革」「高校改革」ではなく、教職員と子ども・父母・府民の願いにもとづく改革をねばり強くすすめることです。

私たちは、「教育の機会均等」など憲法・教育基本法の精神を基本にした高校改革の具体的プランを示し、多くの父母・府民との対話と共同を広げていくとりくみをすすめていきます。私たち府立高教組は、多くのみなさんと力を合わせ、民主的な高校制度確立のために、いっそう努力することを表明するものです。

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