2005年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解

教育委員会はいつまでも破綻した類型制度にしがみつくのはやめ、子どもたちが競争と選別に苦しむ入試制度改善に努力すべきです

2004年9月8日 京都府立高等学校教職員組合執行委員会

一、近年にない募集定員削減となった選抜要項

京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委・市教委)は、8月26日開催の教育委員会で、来春2005年度公立高校の入学者選抜要項と募集定員を決定し、翌日新聞発表を行いました。その特徴は以下の点です。
(1)募集定員は、昨年度に比べて全日制750人、定時制105人の合計855人を減らし、1988年度以降では最少となり、単年度の削減数でも近年では最も多くなりました。これは中学校卒業見込み数が前年度より1397人減少するためで、中学卒業生に対する公立高校の収容率は、前年度と同水準の 63.1%となるとしています。
(2)全日制普通科では、京都市各通学圏で2学級ずつの減(計320名減)、山城通学圏で5学級・200名減、口丹通学圏2学級・80名減、中丹通学圏1 学級・40名減など、大幅な削減となっています。専門学科では、工業系学科の80名減をはじめ、全体で110名削減しています。
(3)全日制普通科Ⅱ類では、府立・市立合わせて9校で人文系・理数系などから文理系への類型変更が行われました。人文系から文理系に変更(鴨沂・洛水・乙訓)、文理系・英語系から文理系一本に変更(南陽・南丹)、理数系から文理系に変更(峰山)、人文系・理数系を統合し文理系に変更(久御山)などのケースです。
(4)入試制度の面では、2004年度入試で大幅な制度変更を行った山城通学圏も含めて、大きな変更は見られません。
(5)市立高校定時制への30人学級(一部25人)の導入、府立工業高校の各学科を36人定員とするなど、一部に学級編成の少人数化が見られます。
(6)「目標に準拠した評価」(いわゆる「絶対評価」)が中学一年生から適用された学年が受験する年度になり、昨年までとられていた経過措置が終了し、報告書への評定の記載が一年からの絶対評価に完全に移行します。同時に報告書の評定の算定方式も変更されます。

二、中学卒業者減に応じて募集定員を減らすやり方では解決されない深刻な不合格者の増加

今回の選抜要項に見られる大きな特徴は、ここ数年でも最大規模の募集定員減となっている点です。理由は、前述のように、「中学卒業予定者の大幅な減少」をあげています。しかし、これで問題は解決しないどころか、いっそう子どもたちの「十五の春を泣かせる」結果になることは、京都市4通学圏のここ数年の推移を見ただけで明らかです。
2003年度入試の不合格者1038人とは、受検者の15.8%にあたり、受検者のおよそ6.3人に一人が不合格になっていることになります。募集定員を削減しなかった2004年度入試では不合格者は減少しましたが、それでも8.5人に一人が不合格になり、依然として高い水準にあります。つまり、中学卒業予定者の減少を理由に募集定員を減らすことによって、公立高校に入れない子どもたちを大量に生み出しているのが実態です。京都市教委は、教育委員会の会議に示した資料に「京都市地区普通科で、不合格者は昨年度の1038名から762名に減少した」としています。これであたかも改善されたかのようにしているのは、よほどの不見識か、ごまかしと言わざるを得ません。
心配されるのは京都市域だけではありません。2004年度の一般入試でかつてない300人を超える不合格者を出した山城通学圏でも、募集定員の一割近い 200人が削減されています。山城通学圏では、後述するように、「受験機会の複数化」や「単独選抜」の導入によって、子どもたちは激しい競争と選別の嵐に苦しめられました。今回の募集定員減でいっそう激しい競争に苦しめられることになるのは明らかです。
今回削減されるのが、南丹を除いて、すべてⅠ類であることも見過ごせません。安心して通える地元の高校の枠が狭まり、子どもたちを苦しめるものです。
さらに深刻なのは、夜間定時制の削減です。今回、市立高校定時制では「きめ細かな教育の実現」(市教委資料)のために学級規模を30人(一部25人)としました。私たちは以前から定時制に学ぶ生徒に豊かな高校教育を保障するため、学級定員を20人とし、小規模・少人数の中で学べるよう、教育諸条件の改善を強く要求してきました。定時制の現場からも切実な要求が出されています。こうしたことを考えると、京都市教委のとった措置は大いに評価されると考えます。しかし、府立の市内夜間定時制では、4校中3校の生徒数が300人台となり、一学級40人近い状態でスタートせざるを得ない過密状態にあります。今回一学級減となる鳥羽定時制では、今年度は12学級・397名が在籍し、来年度は学級数の限度をオーバーすることが心配されています。
もはや形だけ全日制の収容率を上げても定時制の困難が解決されないことは、ここ数年の推移を見れば明らかです。全日制を希望する多くの子どもたちの願いを裏切り、定時制・通信制の教育条件整備を怠ってきた教育委員会の責任は重大です。そして、各方面の反対や心配の声を無視して強行した山城・洛北・堀川の定時制つぶしの責任があらためて問われます。
私たちは、希望するすべての子どもたちが安心して高校教育を受けられるよう、私学に通う子どもたちへの就学援助や定時制・通信制の教育条件改善を含めた、抜本的な改善をあらためて要求するものです。そして教育委員会は、中学卒業予定者が減少する時だからこそ、募集定員を減らさずに30人学級に近づける努力をすべきです。

年度 中学卒業予定者数
(前年度からの減)
募集定員増減 京都市通学圏不合格者数
2000
-641
-440
718
2001
-1519
-770
967
2002
-350
-60
650
2003
-1538
-820
1038
2004
-10
-0
762
2005
-1397
-855

三、類型制度の行きづまりを利用した「Ⅱ類校」づくりは許されない

第二の特徴は、類型制度の大幅な見直しが行われていることです。
類型制度は、小学区制をつぶして取り入れた通学圏制度とともに、1985年に導入された現行の公立高校制度の大きな柱となっています。普通科にⅠ類(標準コース)・Ⅱ類(学力伸張コース)・Ⅲ類(個性伸張コース)を設置し、それぞれに人文系・理数系など(Ⅱ類)、文系・理系など(Ⅰ類)の類型を置いています。
私たちは、制度の発足前から「普通科の中に差別・選別を持ち込む」として、類型制度の導入に強く反対しました。また、導入後もⅡ類が入試時点で類型に分けられていることが多くの問題点を持っていることを指摘し、Ⅱ類の類型別入試をやめるよう要求してきました。
この間の推移は、私たちが指摘した通り、類型制度が完全に破綻していることを示しています。2001年度には人文系37校、理数系29校に対して、文理系が設置されていたのは9校にすぎませんでした。ところが今回の変更も含めると、人文系・理数系とも16校設置で、文理系は28校となります。英語系は洛北・東宇治の2校のみの設置となります。
文理系とは、文字通り文・理系の両方に対応するものであり、教育課程は一年では共通科目を履修し、上の学年に上がるにつれて文・理系の科目を選択します。これは子どもたちの成長や進路意識の形成から考えてみれば当たり前のことです。高校入試の時点から文系だ、理系だと分けることがいかに時代遅れの発想かは明らかです。
しかし同時に、今回の見直しには重大な問題が含まれています。
一つは、露骨な「Ⅱ類校」づくりが意図されていることです。今回の措置で、南陽高校はⅡ類をすべて文理系にすると同時に、9学級中5学級をⅡ類としました。普通科で一学年の学級の過半数をⅡ類としたのは初めてです。単独選抜化で高校のランクづけが進行することを心配する声がありますが、こうした形で早くも現実化することになります。「スーパーⅡ類」とよばれる専門学科が半分以上となっている嵯峨野・堀川などに続く、「スーパー普通科」づくりをすすめることは断じて許せません。
従来から「Ⅱ類は特別のクラス」という学校体制の問題点が指摘されてきましたが、現行の学習指導要領に基づく教育課程では、Ⅰ類は標準の単位数(30単位)で、Ⅱ類はそれ以上(最大35単位)の教育課程とする高校が増えています。あたかも「二つの学校」が存在するかのような実態があります。今回の措置は、一部とはいえ、こうした歪んだ学校体制をいっそう助長し、差別と選別を拡大するものです。
もう一つの問題は、教育委員会の押しつけによって一方的な変更が行われているケースが見られることです。ある府立高校では、校長も含めた学校全体で来年度の設置類型を変更しないことが確認されていたにもかかわらず、府教委の指示で変更を余儀なくされたといいます。また、別の府立高校では、数年前から文理系への変更を要望していたにもかかわらず、「各校に特色を持たせる」という理由でそれを認めず、今回は上からの変更を押しつけたものです。募集定員の削減等とからんで設置類型の変更を押しつける、行政のご都合主義が学校現場を混乱させています。
教育行政が、このような権力的な姿勢をあらため、学校現場の自主性と教職員の民主的な研究と議論によって、子ども・父母・府民の期待に応える学校づくりを励ます立場に立つことを要求します。

四、競争と選別をいっそう過酷なものとする入試制度への反省はないのか

今回は、ここ数年見られたような大幅な選抜制度の変更はありません。しかし、それはこの間生み出されてきた重大な問題点を放置するものです。
その第一は、山城通学圏の「入試改革」なるものを、何の反省もなく継続させていることです。
2004年度入試で山城通学圏に新たに導入された選抜制度は、通学圏の拡大、全面的な単独選抜化と複数選抜の導入、Ⅰ・Ⅱ類の一括募集を柱とするものです。私たちは、今春の入試状況を見た時、この「入試改革」には次のような問題点があると考えます。
(1)受験機会の複数化と単独選抜の導入で、「競争と選別」がいっそう強化されたこと。
(2)希望順位の書き方によって合格・不合格が左右されるなど、「入試の公平性」が損なわれたこと。
(3)前期特色選抜の選考基準が明らかにされないなど、「入試の不透明さ」がいっそうすすんだこと。
(4)総合選抜つぶしで「セーフティネット」が働かないこと。
(5)高校の序列化がいっそう明瞭になり、中学校でも「輪切り指導」にならざるを得ないこと。
(6)通学範囲が大きく広がり、経済的な負担や学校生活への影響、安全面の心配があること。
こうした問題点は、中学校現場からも指摘されています。府教委が言うような「希望する学校を選べる」制度ではなく、「入れそうな高校」を「選ばされる」制度であることは、一度実施しただけで明らかになっています。地教委関係者や中学校の校長などが出席して開催された「第1回山城地域における府立学校再編整備に係る懇談会」(7月29日)でも、「マイナス面もあったのではないか」「地域性が薄れていくことが心配」「行きたい学校を選べなかったという生徒もいる。中退者が多くなっていないか」といった意見が出されていることを見ても、多くの関係者が危惧を抱いているのです。
私たちは、学校現場の声も踏まえて、山城通学圏の選抜制度を見直すことを強く要求します。
第二は、社会的にも問題となった洛北・西京の付属中学校入試の問題です。
公立の中高一貫校では、受験競争の低年齢化を招かないよう、学力検査はしないことになっています。しかし今春の付属中学校入試では、私立中学校並みの難問を出題して大きな話題になりました。もともと「小学校六年間で学んだことで解ける」(洛北)、「特別な勉強をしなくてもよい」(西京)としていましたが、実態はまったく違いました。中高一貫校を「エリート校」にすることを明確にした入試であったと言えます。私たちは、受験競争を低年齢化させ、中学校・高校はもちろん、小学校教育さえも歪める中高一貫教育の選択的導入にあらためて反対を表明します。そして中教審答申や国会の付帯決議さえ逸脱し、法に違反する付属中学校入試の見直しを要求します。

五、押しつけの「入試改革」「高校改革」をやめさせ、地域の公立高校をみんなの力で守ろう

府教委は、7月に確定した「府立高校改革推進計画(Ⅱ)」にもとづいて、高校べらしの統廃合をすすめる計画を検討しています。その柱は次の点です。
(1)全日制の適正規模を、40人学級を前提に「一学年八学級程度」とし、高校統廃合をすすめる。
(2)夜間定時制つぶしをさらにすすめ、「新しいタイプの単位制高校(フレックス・ハイスクール)」にその機能を移すなどの再編を行う。
(3)府北部に7校設置されている分校について、本校への統合や分校同士の統合を推進する。
全国的にすすめられている「高校再編」の名による高校統廃合=高校つぶしを、この京都で本格的に推進しようとする計画に他なりません。今回の選抜要項が、こうした計画と軌を一にするものであることは明白です。
今公立高校に求められているのは、一部の高校の「エリート化」を図り、子どもたちの中にさらなる競争を持ち込むことではなく、希望する子どもたち全員に高校教育を保障することです。どの高校でも安心して学べるよう教育条件を整備し、希望の進路を実現できる高校を作ることです。必要のない公立高校は一つもありません。かけがえのない公立高校を、一校の統廃合も許さず、地域の高校として守り育てることが必要です。そのためにも、府教委がおしつける上からの「入試改革」「高校改革」ではなく、教職員と子ども・父母・府民の願いにもとづく改革をねばり強くすすめることが何よりも大切です。
私たち府立高教組は、多くのみなさんと力を合わせ、民主的な高校制度確立と入試制度の改善のために、いっそう努力することを表明するものです。

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