2006年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解

高校統廃合、定時制つぶしの一方で「スーパー高校」をつくる府・市教委のやり方に府民は疑問を持っています。希望する子どもたちに豊かな高校教育を保障する基本に戻るべきです。

2005年9月17日 京都府立高等学校教職員組合執行委員会

1.入学者選抜要項の概要と特徴

京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委・市教委)は、8月25日開催の教育委員会で、来春2006年度公立高校の入学者選抜要項と募集定員を決定し、翌日新聞発表を行いました。
その概要と特徴は以下の点です。
(1)募集総定員は1万4930人で、昨年度に比べて全日制90人、定時制55人の合計145人をへらしました。総定員は1988年度以降では最少となり、初めて1万5千人を下回りました。中学校卒業見込み数は前年度より135人減少し、中学卒業生に対する公立高校の収容率は、前年度から0.2ポイント下がって62.9%になるとしています。
(2)学科編成では、桃山・南陽・亀岡・西舞鶴の4校に計5学級の理数系専門学科を新設しました。西舞鶴の商業科を募集停止として廃止、大江のソフト経済科をビジネス科学科に変更しました。
(3)全日制普通科 II 類では、綾部・西舞鶴・亀岡の3校で人文系・理数系から文理系、朱雀で人文系から文理系への類型変更が行われました。桃山では理数系の廃止、塔南では理数系が復活しています。また、類型をおかない普通科総合選択制が新たに八幡・大江の2校に導入されます。
(4)選抜制度では、2004年度入試から山城通学圏で導入された普通科の「特色選抜」を、新たに口丹・中丹・丹後通学圏にも導入し、3通学圏内はどこでも出願可能としました(定員の10%以内)。それにともない、現行制度にある「特別活動・部活動による他学区への入学希望」は廃止されました。さらに3通学圏での通学区域の弾力化をすすめて、「他の通学区域から入学できる割合」を、Ⅰ類では中丹・丹後通学圏は20%から30%に拡大(口丹は10%で変更なし)、 II 類は中丹を「制限なし」(丹後はすでに「制限なし」、口丹は50%で変更なし)としました。
(5)新たな制度として、中学で長期に欠席していた生徒を別枠で募集する「長期欠席者特別入学者選抜」を朱雀・城陽・西舞鶴の3校に導入します。
以下、私たちの見解と要求を明らかにします。

2.高校つぶし、定時制つぶしと連動した募集定員べらし

今回の選抜要項には、子どもたちに豊かな高校教育を保障する上で重大な問題点が含まれています。
その第一は、募集定員が初めて1万5千人を下回ったことに見られるように、依然として「中学卒業予定者の減少」を理由にした募集定員べらしが行われていることです。
今回は中学卒業予定者が135人減少することに対して、募集定員を145名削減しています。2000年度からだけ見ても、最大でも卒業予定者減少分の7 割足らず、多くは5割前後の削減にとどめています。それでも多数の不合格者を出した年もあり、「希望するすべての子どもに高校教育の保障を」という願いを踏みにじる事態が生まれています。その点から考えて、卒業予定者減少分を上回る募集定員削減が子どもたちの進路に重大な影響をもたらすことは避けられません。
されに重大な問題は、市立洛陽・伏見定時制の55名という大幅定員削減です。京都市教委は、本年3月に「京都市立工業高校改革・基本方針」を発表し、その中で洛陽・伏見定時制を統合し、伏見に新たに昼間定時制を設置するとしています。そして夜間定時制については、「若干名の夜間部を伏見工業高校に当面存続させる」として、事実上の夜間定時制つぶしを明らかにしました。その点から考えると、今回の定員削減は、夜間定時制つぶしの地ならしをする既成事実づくりに他なりません。今年度よりさらに踏み込んで20人学級にしたのは評価されますが、定時制つぶしと連動していることは重大な問題です。同様のことは、山城地域の高校再編で統廃合の対象校となっている城南が1学級減となっていることにも現れています。
市内定時制の廃止や山城地域の高校統廃合を見れば明らかなように、府・市教委は、「発展的統合」や「再編」「改革」の名による高校つぶし、定時制つぶしを露骨に推し進めています。それと連動する募集定員削減には反対を表明します。

3.いっそう進行する「スーパー高校」づくり

第二は、今回府教委の「目玉」として、「その他の専門学科」と名付けられた学科を大幅に増やしたことです。「その他の専門学科」とは職業系あるいは芸術系・外国語系などに属さない専門学科で、世間では「府内全域から志願者を集める難関高校」「難関大学への進学を目的とする高校」というのがもっぱらの評判です。今回4校で新設された学科は、自然科学科(桃山)、サイエンスリサーチ科(南陽)、数理科学科(亀岡)、理数探究科(西舞鶴)の名が示す通り、いずれも理数系の専門学科です。それぞれ異なる名称をつけて、府内全域から志願者を募集できるようにしています。
この理数系専門学科の設置はさまざまな影響をもたらすことが懸念されています。
① 通学圏をこえた競争がいっそう激しく展開されることになります。この競争は「優秀な生徒集め競争」であり、府教委が「その他の専門学科」を260名から460名に大幅に増加させ、市立の360名を上回る規模となったことは、「府市競争をいっそう激化するもの」という指摘すら学校現場から出ています。また、上記4校のある教頭は「これまで堀川高や嵯峨野高、西京高に集中していた層を、われわれの力でどこまで分散させることができるか」と語り、中学や進学塾への「売り込み」を強調しています(8/19付京都新聞)。同じ記事の中には「府内全体の京大の現役合格者数は昔からそれほど変わっていないはず。同じパイの中から優秀な生徒をどれだけ集められるかで、高校の進学実績が決まる」と八幡・南八幡の合同学校説明会での校長の発言が紹介されています。このような「優秀な生徒の争奪競争」が公立高校のあるべき姿でないことは言うまでもありません。
② 専門学科には、専門科目の設定や教職員の加配、施設・設備面の拡充など、普通科にはない特別措置がとられます。府・市教委が嵯峨野・堀川・西京などに通常をこえる校舎改築を行い、施設・設備費が投入され、普通科を上回る教職員が配置されているのは周知の事実です。こうした教育予算の差別的配分が、「特別な学校・学科」という実態と意識を生み、普通校との格差をますます拡大しています。
③ 行政によって「特色ある学校づくり」がさかんに強調され、そのもとで普通科から専門学科への転換が強力に推進されています。理数系専門学科の設置が「理数系大学への進学」を目的としたもので、そのための実績を競い合うのがねらいです。こうした進学に「特化」した学科新設が高校教育をいかに歪めているか、前述の京都新聞の記事を見れば明らかです。

4.切り捨てですすむ職業学科と普通科の縮小

第三は、職業系専門学科切り捨てと普通科縮小の方向を示していることです。
西舞鶴の商業科は募集停止で廃止となり、南八幡の流通マネージメント科とオフィス情報科は2007年度に八幡との統合で廃止となります。明らかに商業系学科の消滅を推進するものです。「多様化」をいいながら商業を学ぶ機会を奪うという、子ども達の進路保障にとっても重大な問題をはらんでいます。
II 類の破綻と普通科の切り捨ての方向もはっきりさせています。今回の募集要項でも、 II 類が人文・理数系から文理系に転換する方向が加速されています。前述の理数系専門学科との関連で、「理数系の優秀な志願者は4校に集中させる」という意図が露骨な配置になっています。
また、類を設定しない「総合選択制」を八幡・大江に拡大する一方、八幡との統合を理由に南八幡の総合選択制を卒業生が出る前に廃止を決定するという、スクラップアンドビルドを行っています。
高校三原則つぶしの「制度改革」の目玉として、「学力伸長」「個性伸長」などと銘打って登場させた類型制度が、完全に行きづまっています。教育委員会が新学科設置に躍起になっていることは、多くの子どもたちが通う普通科を軽視し縮小をすすめていることに他なりません。

5.害悪を府内全域にまき散らす北部への「特色選抜」導入

第四は、口丹以北の通学圏に「前期特色選抜」を導入し、問題だらけの入試制度を府内全域に広げようとしていることです。
「特色選抜」とは、一般選抜に先んじて推薦入試と同時期に普通科で行われる入試で、それぞれの高校が設定した「特色」を中学生が選んで志願するものです。先行して実施されている山城通学圏での2年間の推移を見ると、次のような問題点が指摘される制度です。
① 本来普通科は、高校が立地する地域の子どもたちを受け入れる役割をもつ学校であり、高校ごとの歴史や校風の違いはあっても、教育内容に大きな差異はないはずです。通いやすい近くの高校で格差のない教育を保障するのが本来のあるべき姿です。「特色選抜」は、この普通科に強引に「特色」を作らせ、学校間の「特色」競争を押しつける制度です。
② 入試の公平性をそこない、不正の温床にもつながりかねない制度です。本来入試は公平・公正であるのが当然の前提です。ところが山城通学圏での「特色選抜」は、配点や合格基準が公開されず、中には当該校の教職員にすら明らかにされないまま密室で行われた高校もありました。さすがに今年度入試では一定の配点基準が明らかにされましたが、合格基準については非公開のままです。「教職員が要求してようやく得点は報告されたが合格基準は不明。成績に関係なく合格を決めたのではないか」という高校もあります。子どもや保護者にとって、「特色選抜」は得体の知れない不透明な制度です。
③ 「特色選抜」は受験機会の複数化として位置づけられており、「受験機会が増える」「多元的な価値尺度による選抜」と宣伝されています。山城通学圏でも多くの中学生が出願しましたが、合格できるのは上位の一部に限られています。宣伝文句とは裏腹に、中学生の間では「成績のいい子しか受からない」という評判が定着し、2年目は志願者が減少しました。志願者の多くが「何回も不合格を経験」するという、子どもたちを傷つける入試であるといわざるを得ません。
④ 山城通学圏では、通学圏の拡大と単独選抜がセットで導入されたことにより、いっそう複雑で分かりにくい制度になりました。「特色選抜」と一般入試の複雑さが相まって、「希望順位の書き方で合否が左右される。バクチのような制度だ」という声が聞かれます。中学生の間に不安と混乱が広がり、競争を激化させる制度です。
以上のように、さまざまな問題点を含む制度であり、口丹以北の通学圏での実施を取り止めるべきです。同時に学校現場の声も踏まえて、山城通学圏の選抜制度を見直すことを強く要求します。

6.高校入試と高校教育改善のために次のことを要求します

私たちは、希望する子どもたちに豊かな高校教育を保障するため、次のことを要求します。
① 長期欠席者の特別入学者選抜制度は、現状では特別に配慮すべき子どもたちに高校教育を保障する上で必要な制度だと考えます。しかし改善すべき問題もあり、学校現場の要望を最大限取り入れた施策を行うべきです。
1) 本来、特別な配慮が必要な子どもたちはどこの高校でも受け入れるべきであり、どの子でも安心して高校教育を受けられるよう、教育条件を整備すべきです。特定の学校にのみ受け入れ枠を作るという「安上がり」の発想はやめるべきです。
2) 最大の課題は入学後のサポート体制を充実させることです。そのために教育委員会は、学校任せにせず、養護教諭の複数配置や支援教職員の加配措置など、学校現場の努力を支援する最大限の措置をとるべきです。
3) 入学後の子どもたちにとっても、遠距離通学になるケースなどが考えられます。通学や学習の問題を入学後もしっかりサポートできるよう、教育委員会は学校現場との連携を深めるよう求めます。
② 子どもたちの進路をふさぐ山城地域の高校統廃合、市内の夜間定時制の統廃合、北部での分校統廃合など、高校つぶしの諸計画やその計画策定をただちにやめること。子どもたちが安心して高校で学べるよう、全日制での30人学級、定時制では20人学級を実現して、教育条件整備に力をつくすことを要求します。
③ 「選択の拡大」を口実にした通学圏の拡大や入試制度の多様化をやめること。子どもたちの中にいっそうの競争を持ち込む入試制度をやめ、安心して地域の高校に通えるように改善すべきです。総合選抜制度の廃止ではなく、充実させる方向での検討を要求します。また、「特色選抜」や推薦入試など、不透明・不公正な入試制度の改善を要求します。
④ 矛盾が深まっている普通科の類・類型別入試を廃止すること。多様な進路希望を持つ普通科での30人学級実現や多様な選択科目の保障など、教育条件の整備をすすめるよう要求します。
⑤ 総合選択制導入など普通科のシステム変更や学科改編などにあたって、あくまで学校現場の自主的な議論と研究を尊重し、教育委員会が高圧的に押しつけることがないよう求めます。また高校入試問題を議論する場として、以前開催されていた「入試選抜協議会」を再開させるなど、広く意見を取り入れた施策をすすめるよう要求します。
今何よりも求められるのは、トップダウンで教育委員会が上から押しつける「入試改革」「高校改革」ではありません。教職員と子ども・父母・府民の願いにもとづく改革を学校現場からねばり強くすすめることが何よりも大切です。私たち府立高教組は、多くのみなさんと力を合わせ、民主的な高校制度確立と入試制度の改善のために、いっそう努力することを表明するものです。

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