子ども・教職員・学校をさらに競争に追い込み、格差を広げる京都市・乙訓地域の通学圏拡大・入試制度改悪は撤回を

2007年10月23日
京都府立高等学校教職員組合常任執行委員会

京都府・市両教委は、10月18日の各教育委員会において、京都市・乙訓地域の公立高校普通科の通学圏と入試制度の「見直し」の具体策を決定しました。その内容は、①現行の4通学圏を南北2通学圏に再編、② I 類において、新たに前期特色選抜(募集定員10%)を導入し、中期選抜での部活動・特別活動希望枠(募集定員20%)と合わせて30%の募集定員を通学圏を越えてどの高校でも志願可能にし、現行の総合選抜枠(地理配分)の募集定員を10%縮小、③ II 類における募集定員の50%以内で通学圏を越えてどの高校でも志願可能にし、2009年度入試(現在中学2年生)から実施予定というものです。

またもや「新聞報道で初めて知る」事態に

最初に指摘しなければならないことは、府・市両教委が「懇談会」や「説明会」「意見募集」において出された様々な意見や不安を、何ら施策に反映していないことです。そして、通学圏の分け方をはじめとする入試制度の具体的な変更点について、現場の教職員や生徒・父母が、またもや「新聞報道で初めて知る」事態になったという点は重大な問題です。中学校や高校で一切教職員や生徒・父母に説明もなく、その意見も聞かないまま、教育委員会で決定したことは言語道断です。さらに、府教育委員会で審議の最中にこれについての記事が掲載された京都新聞夕刊で報道されているなど、教育委員会の審議が軽視されていることの表れと言わざるをえません。

1通学圏・単独選抜を目指すもの

2通学圏への拡大および通学圏を越えて志願可能にしたことは、2通学圏としながら実質1通学圏と同じはたらきをもたせ、希望枠拡大で「単独選抜」に限りなく近づけるものになると言わざるをえません。この方向は、近くの高校へ行ける枠を縮小するとともに、子どもたち、教職員、学校をいっそう競わせ、学校間の序列化を加速させることになり、 I 類に残した「総合選抜」のもつ意味を無にしてしまいかねないものです。とりわけ「単独選抜」をとる II 類への影響は大きく、定員割れが起こる高校が増加するおそれがあり、そのため普通科全体の入学者数が減り、公立高校へ行きたくても行けない中学生が増えることも予想されます。また、中学生にとっては全通学圏21校の普通科 I 類・ II 類・ III 類に加え、専門学科や単位制高校など膨大な「選べる高校」から選択することの困難も懸念されます。「行きたい学校を選べるのはぼくのことではなかった」と言う山城通学圏の中学生の言葉を教訓化すべきではないでしょうか。

いままで行けた高校に行けない

それに加えて今回、南北2通学圏にすることはさらに重大な問題をはらんでいます。その一つは、現行の東通学圏と西通学圏が南北に分断されることで、現在の4通学圏ならば「総合選抜」にもとづく地理的配分で通学できた近くの高校へ行けなくなる生徒が生まれます。また、通学圏が東西に広がるために長距離通学や危険な道路の自転車通学を余儀なくされる生徒が多数出てくるという心配です。二つ目は、大学進学の実績を掲げる「専門学科」設置校が北通学圏に片寄っていることから、 I 類・ II 類においてもその学校に希望が集中し、南北の通学圏で新たな格差が生じる可能性が懸念される問題です。

破綻している前期特色選抜

内申書と作文や面接で合否を判断する前期特色選抜は、すでに導入されている山城通学圏と口丹以北の通学圏をはじめ他府県でも、不合格者が大量に出ることや客観性に欠けるという問題点が共通に指摘されています。他府県ではすでに取りやめたり、見直されはじめています。このようにすでに破綻済みの入試制度をなぜ京都市・乙訓地域にも導入する必要があるのでしょうか。

通学圏拡大と入試制度改変は高校統廃合への一里塚

山城通学圏での経過からしても、通学圏拡大・入試制度改変の後には必ず高校再編に着手することを警戒しなければなりません。現在すすめられている新自由主義的な「教育改革」のねらいのひとつに、教育への税金投入を極力減らすことがあります。通学圏拡大と単独選抜拡大で、学校を序列化し、「人気がない高校」は統廃合し、教育予算を減らすというのが、京都でも全国でも起こっている行政の常とう手段です。

「総合選抜制」を拡大し、競争・格差の縮小を

私たちは、上述のような重大な問題点を何ら解決しないまま、拙速に施策を決定することには反対です。教育委員会が「決定」した「改善事項」の施策を撤回し、学校当事者である現場の教職員、中学生、保護者や府・市民の声を広く聞き、山城通学圏をはじめ、現在の通学圏や入試制度についてのていねいな検証をふまえたうえで、十分な時間をかけた検討をすべきです。
私たちは、いっそうの競争原理の導入で子どもたちを「勝ち組」「負け組」に振り分け、競争・格差をいっそう拡大させるのではなく、希望するすべての子どもたちに等しく高校教育の機会を保障することを教育行政に求めます。どの公立高校へ行っても、どの子にも確かな学力と発達を保障するという本来の高校教育を、地域の父母・府民と教職員が共同してつくりあげることが重要です。そのことを保障する「総合選抜制」を拡大し、各学校の教育条件整備をすすめることこそ、今、教育行政に求められている重大な責任です。

以上

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