【見解】「京都市・乙訓地域公立高校入学者選抜に係る懇談会」の「まとめ」について

2007年6月28日
京都教職員組合
京都府立高等学校教職員組合
京都市教職員組合
京都市立高等学校教職員組合
乙訓教職員組合

京都府教委と京都市教委が設置した、「京都市・乙訓地域公立高校入学者選抜に係る懇談会」(以下「懇談会」)は、6月26日、両教育委員会に対し、「まとめ」を提出した。その主な内容は、①現行の4通学圏を2通学圏に統合する、②選抜制度については、総合選抜制度を残す、③部活動・特別活動による「希望枠」を拡大していく、④「受験機会の複数化」や「多元的な評価尺度による選抜」の導入、という4つの柱となっている。
私たちは、係る「まとめ」に対し、以下の見解を表明するものである。

1.論議の経過について問題がある。

「懇談会」は中学・高校の校長、PTAの代表で構成し、「公開」としてきたものの、事前の告知も不十分なまま、4月27日の第1回懇談会以降、10日に1回のハイペースで「まとめ」を作成するという、あまりにも拙速な審議となった。そのため、以下に指摘する懸念される問題点や課題について、十分な解決方向もないまま、妥協的結論となっており、府・市民、父母、教職員の声や心配に応えるものとなっていない。手続き的にもあまりに無理なものとなっている。
さらに、「懇談会」は当初より、「現在の通学圏と選抜制度の見直し」がテーマとなっており、「見直しありき」の論議となったことは、問題がある。これに関しては、委員からも、「はじめから通学圏は必ず変えないといけないと会議に臨んでいない。今のままでもいいと思っている」(PTA代表)などと指摘されたとおりである。
今後、係る経過上の問題点をふまえ、あらためて、府・市民、父母、教職員の声に耳を傾ける場をつくり、ていねいな議論をおこない、その内容を反映させる手続きが不可欠である。

2.「懇談会」において、以下の指摘や課題提起があった。「まとめ」は、これらの懸念に応えるものになっていない。

①委員から、私立高校にも行けない経済的困難な家庭の子どもが安心して高校へ行くことができるように公立高校の収容率を上げることを求める意見も出された。この意見も含め、普通科や定時制の定員を増やすことおよび修学保障を充実させることこそ必要な施策であるが、こうした観点が「まとめ」には反映されていない。

②進路指導を実際に担っている中学校現場の校長の委員から「行きたい学校に行けるのは学力の高い一部生徒で、遠くても行ける学校を選ばされる」「高校間の格差が拡大、定着」「不合格を恐れて私学受験の増加」「通学費など経済的負担増」などの危惧が噴出し、府教委が推進をはかろうとしている「多様な『選択』」の実像や単独選抜制の問題点が指摘された。これらはいずれも、先行して実施されている山城通学圏で実際に起こっていることであり、山城通学圏の入試制度の問題点を尋ねたPTAの委員の質問に対しても府教委事務局は回答しなかった。単独選抜や「特色選抜」の弊害などについては山城通学圏で実際何が起こったのか検証が重要であるが、「まとめ」にはそのことが全く欠落している。

③第5回目の懇談会で府立高校校長の委員が「(「京都市乙訓地域の公立高校入学者選抜の現状と課題について」の項に)背景や専門学科のことが触れられていない」ことを指摘した。普通科の定員が減り、Ⅱ類の定員割れをはじめ、現在の入試制度のあり方に大きな影響を与えていることを避けている。「まとめ」は、現在の入試制度の現状と問題点の分析が極めて不十分であるといわざるをえない。

3.その下でも、「1通学圏」「単独選抜」など極端な制度見直しの意見に対し、「総合選抜制度を残す」とするなど、一定の見識を示したことは重要である。

論議を通じても、「現行制度を良いと思っている生徒や保護者は多いと思う。4通学圏あることによって地域が支えられてきた面があるが、生徒が地元高校であったためにケアされてきた面もある」「単独選抜制にすると、定員割れする高校が出てくるのではないか」「単独選抜制にすれば学校に序列化がすすむ」などの指摘が相次いだことをふまえたものであり、それは、2004年に「1通学圏への統合」「単独選抜」へ見直された山城通学圏ですでに指摘されている問題点そのものである。一方で、「希望枠を拡大」はその議論と矛盾する方向であり、問題がある。「総合選抜制度を残した」ことが、「特色化」や「広域からの希望枠」によって、空文化することのないよう、具体的な設計を行うことが重要である。
同時に「2通学圏に統合」することによって起こりうる問題点は「懇談会」の意見交換の中で指摘されており、「統合」方向の見直しをすべきである。

4.係る課題は、中学生側から言えば、みんなが高校へ行けるのかどうか、不合格を15歳で味わうことにならないのか、「15の春は泣かせない」ことが問われている。

高校側から見れば、地元の高校として、どの子にも確かな学力と発達を保障するという本来の高校教育を、地域の父母、府・市民と共同してつくりあげることができるか、「特色」の名のもとに、結局は「大学進学実績」の競争に乙訓・市内の公立高校を組み込んでいくのかが問われている。子どもたちの進路と将来がかかった制度論議である。今後、両教委で区域割りなどを検討し、早ければ2009年度入試からの導入されることが報道されている。両教委は拙速な施策化をはかることなく、すべての子どもたちを視野に入れた徹底した慎重論議こそが必要である。今回の「まとめ」を素材として、行政の責任であらためて府・市民的な議論を起こすことを提言するものである。

以上

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