2011年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解と要求


学校間格差を拡大する入試制度を改め、希望するすべての子どもに豊かな高校教育を

2010年9月7日「京都府高号外」
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学校間格差を拡大する入試制度を改め、希望するすべての子どもに豊かな高校教育を
~2011年度公立高校入学者選抜要項・募集定員に対する見解と要求~

2010年9月7日 京都府立高等学校教職員組合執行委員会
1.2011年度入学者選抜要項の概要
 京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委、市教委)は、8月25日(府教委)、26日(市教委)開催の教育委員会で来春2011年度公立高校入学者選抜要項と募集定員を決定し、27日付け朝刊で新聞発表を行いました。その概要は以下の通りです。
(1) 公立中学校卒業見込数と募集定員、収容率   公立中学校卒業見込数は20,256人(前年度比925人減少)。公立高校の募集総定員は14,990人(前年度比全日制430人減、定時制20人増)で合計410人の減。公立高校の収容率(卒業生数に対する募集定員の割合)は74.0%(前年度 72.7%)で、全日制では前年度と同じく過去最高の69.0%になる。

 (2) 全日制普通科の定員

○京都市北通学圏では全体で160人(北稜・朱雀・嵯峨野・紫野高校Ⅰ類で各40人)の減。
○京都市南通学圏では全体で120人(東稜・日吉ヶ丘・塔南高校Ⅰ類で各40人)の減。
○山城通学圏ではⅠ・Ⅱ類の類・類型制を廃止し、普通科としての募集に変更。全体で120人(莵道・西城陽・南陽高校で各40人)の減。
○口丹通学圏では全体での増減はないが、Ⅰ・Ⅱ類一括募集の「定員のめやす」を変更し、亀岡高校Ⅰ類で40人の減、Ⅱ類(文理)で40人の増。
○中丹通学圏では全体で40人の減。Ⅰ・Ⅱ類一括募集の「定員のめやす」を変更し、福知山、西舞鶴高校Ⅰ類で各40人の減、Ⅱ類(福知山は理数、西舞鶴は文理)で各40人の増。また、東舞鶴高校Ⅱ類(文理)で40人の減。
○丹後通学圏では全体で40人の減。Ⅰ・Ⅱ類一括募集の「定員のめやす」を変更し、宮津高校Ⅰ類で40人の減、Ⅱ類(文理)で40人の増。また、網野高校Ⅰ類で40人の減。

(3) 定時制の定員

全体で20人の増。京都市内夜間定時制の学級定員を30人にする。鳥羽、朱雀高校で各10人、桃山高校では普通科で20人の増、商業科で10人の減。伏見工業高校(昼間定時制)で10人の減。

(4) 専門学科の定員

伏見工業高校システム工学科で10人の増。南陽高校サイエンスリサーチ学科で40人の増。

(5)選抜制度

 山城通学圏のⅠ・Ⅱ類の類・類型制を廃止し、普通科として募集する。それに伴い、東宇治高校のⅡ類(英語)推薦選抜は廃止し、特色選抜に組み入れる。
長期欠席者特別入学者選抜の実施校に、新たに乙訓高校普通科(5人程度)を加える。

2.希望者が入学できる定員の確保を
(1) 運動の成果で39年ぶりの京都市内夜間定時制募集定員増
  定時制は働きつつ学ぶ青年はもとより、中学校で不登校であったり、生活や心身に困難な課題を抱えた生徒が多く学んでいます。少人数でゆっくりと家庭的に学べるきめ細かな指導ができるよう、教育条件の整備が求められています。それにもかかわらず、府・市両教委は10年前には1,000人あった京都市内夜間定時制の定員を440人まで減らした結果、定時制に入れない生徒を毎年、出してきました。
  私たちは「京都の定時制・通信制教育を考えるみんなの会」の父母や卒業生、府・市民のみなさんと共同して、毎年のように「京都市内夜間定時制の募集定員増を求める請願署名」に取り組み、両教育委員会への申し入れや傍聴活動を展開してきました。
  その結果、来年度は京都市内夜間定時制の学級定員を40人から30人にして学級数を増やし、39年ぶりに30人の定員増が行われることになりました。私たちは教育の機会均等を保障する立場からこの措置を歓迎するものです。と同時に、この措置に伴って、困難な課題を抱えた生徒の修学保障のために、従来からとられてきた教育条件整備を引き続き行い、決して切り下げることがないよう強く求めます。
                                                       
(2) 希望者が入学できる全日制定員の確保を---定員を超える合格はあくまで緊急避難策
  今春入試において、府・市教育委員会は定員を超える合格を出しました。その数は京都市南・北・山城の三通学圏で156人、約4学級分に上ります。その結果、京都市南・北・山城通学圏の高校1年生は、Ⅱ類と難関大学進学を掲げる専門学科で1学級42人、Ⅰ類では各校で1学級だけ41人での出発になりました。また、京都市内のⅢ類も1学級42人(1校は41人)で出発しています。
  一昨年度、丹後通学圏で募集定員を削減し過ぎて大量の不合格者が出ると予想されたときに、私たちは父母・府民とともに募集定員増の要求運動を展開しました。その結果、教育長が「柔軟な対応」を表明して定員を超える合格を認めたことは、緊急避難的な措置として「教育行政としての英断」と評価しましたが、毎年のように定員を超えて合格させようとするのはいかがなものでしょう。
  私たちの試算では、今回の募集定員で、口丹・中丹・丹後の三通学圏での収容率は上昇しているようですが、京都市南・北・山城の三通学圏では、昨年度程度の収容率しか確保できていないのではないかという結果が出ています。つまり、京都市南・北・山城の三通学圏の「定員を減らし過ぎなのではないか」「昨年度のように定員を超える合格を出さない限り、160人近い不合格者が出るのではないか」という疑問です。この点について、中学生や父母、府民に対して説明する責任があると考えます。
  あわせて重大なことは、どこでもⅠ類の定員ばかり削減していることです。なかでも嵯峨野、山城、堀川高校など難関大学進学を掲げる「専門学科」が集中する京都市北通学圏では希望者に比べてⅠ類の定員が不足し、いくつもの高校を通過して遠くの学校に通学しなければならない事態が年々深刻化しています。
  引き続く経済不況の下で、公立高校授業料無償化の成果として公立高校志望者が増えています。教育行政の責務で、希望者が入学できる定員を確保すべきです。

3.子どもをいっそうの競争に追い込み、学校内外で 格差を拡大する高校制度の抜本的な改善を
(1) 山城通学圏の「類・類型制」廃止のあとには---「ほぼ成績順学級編成」を府下全域に展開!? 
  来年度入試から山城通学圏で「類・類型制」が廃止され、Ⅰ・Ⅱ類を選ぶ方式から「普通科」として出願する方式に変更されます。
  府教委は類・類型制を「発展的に解消」した理由を、「各学校の特色化が進み、類・類型の選択よりも学校の選択を重視する傾向や、入学後に柔軟にコース等を選択できる教育システムに対するニーズの高まりなど、従来のシステムや選抜制度では柔軟で効果的な対応が十分に行われにくい状況が生じ」た結果であると自ら制度疲労を認めています。(府教委HP「平成23年度公立高校普通科の特色選抜・教育システム資料-山城通学圏-」)それならば、25年前の導入時から、「学校間格差だけでなく学校内の序列を助長する」と批判されてきた制度を、全通学圏ですぐに廃止すべきです。
  ところで、類・類型制を「解消」したあとに行われる「入学後に柔軟にコース等を選択できる教育システム」とはどのようなものでしょうか。
  今、各高校では「特色化」の名の下に、果てしない中学生獲得競争を強いられ、「進学コースをつくらないと地域から見離される」という見えない恐怖心をあおられて、次々と類・類型の枠に縛られない「教育課程特例校」となって、新たなコース(標準と発展コース)に切り替えることを余儀なくされています。
  新たな普通科のコース制は、従来、類・類型と呼んでいたものを標準・発展コースと名称変更したものに過ぎません。しかし、問題は単なる名称変更にとどまりません。高校入試に合格した新入生に対し、各校でさらに学力診断テストを行って、コース希望は取るものの、発展コースが成績順に決められること。2年生に進級時に、生徒の希望と年間を通した成績を基準にしながら、発展コースと標準コースの入れ替えを行い、常に発展コースに成績上位者を確保しようとすること。つまり、「ほぼ成績順学級編成」とも言うべきシステムになるのではないかと私たちは危惧しています。
                                                       
(2) 学校序列化を強力に進める口丹・中丹・丹後通学圏の 「Ⅱ類」への定員移動
  「高校入試制度改革の実験場」と言われる山城通学圏に次いで、口丹・中丹・丹後の三通学圏では、今春入試から「Ⅰ類・Ⅱ類一括募集」が導入されました。これは「Ⅱ類の定員割れ」を避けるための手段でしたが、今春入試では、口丹通学圏のすべての普通科で「定員(のめやす)」割れをおこしてしまいました。
  こうした中で来年度の変更は、口丹・中丹・丹後の三通学圏とも難関大学進学を掲げる「専門学科」も置く学校のⅠ類を減らし、Ⅱ類を増やすものとなっています。これが学校間の序列をいっそう促進することは必至です。
  そのあとに来るのは山城通学圏と同様に、「類・類型制」の廃止と「ほぼ成績順学級編成」の実施です。その結果、地元の学校に通えない生徒が現在よりもさらに増加し、遠距離通学のために通学費の負担が増えます。その上で、分校を本校に吸収したり、学科再編をして学校統廃合を行うというのが「府立高校改革推進計画」で示されている改革の方向なのです。
  本年6月、国連子どもの権利委員会は日本政府へ「高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子ども(注:18歳以下をさす)のいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性」を指摘し、「極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告」しました。
  今、教育行政に求められているのは、「多様化」の名の下に学校を競争的な環境において格差を拡大させることではなく、どの公立高校へ行っても、どの子にも確かな学力と人格の発達を保障するための条件を整備することなのです。

4.高校入試と高校教育改善のために、意見を寄せ合いましょう

私たち府立高教組は、「生徒、父母、教職員、地域の声が生きる地域の学校」「一人ひとりが大切にされていると感じられ、教職員と生徒が友に育ち合える学校」を作るために、競争によって格差を拡大する現在の入試制度や高校教育制度を改善する次の提案をしています。府民のみなさんからも率直なご意見や疑問をお寄せいただき、教育行政に求めていきましょう。
                                                       
(1) 募集定員、高校制度と教育条件整備についての提案
  ①毎年、定員を超えた合格を出さないですむように、今回の計画に加えて、京都市北・南・山城通学圏で160人分(4学級分)の定員を確保してください。特に、嵯峨野、山城、堀川高校など難関大学進学を掲げる「専門学科」が集中する京都市北通学圏西部地域の高校にⅠ類の募集定員を増やしてください。
  ②大規模校を解消し、同じ通学圏の高校では普通科学級数のアンバランスをできるだけなくしてください。全日制普通科の「類・類型制」をただちにやめ、「ほぼ成績順学級編成」を行わないでください。難関大学進学を掲げる「専門学科」を減らし、多様な進路希望に対応できる普通科を増やしてください。
  ③口丹・中丹・丹後通学圏での、分校を含めた統廃合など、高校つぶしをしないでください。
  ④今回の京都市内夜間定時制の「学級定員30人」実施にあたっては、教職員を増員することとあわせて、少人数教育を保障するために講座数の伸びを保障するなど教育条件の引き下げを行わないようにしてください。また、山城通学圏での定時制の設置や定時制の学級定員を20人以下に抑えるなど教育条件整備に力を尽くしてください。
  ⑤不登校や特別なニーズをもつ生徒が安心して学べるよう、教職員の増員も含めた教育条件整備を早急に進めてください。
  ⑥教育費の父母負担軽減のため、給付制奨学金などの修学援助制度を作ってください。
                                                       
(2) 高校入試制度の改善についての提案

  ①「地元の、フツーの公立高校に行き、勉強もクラブも頑張りたい」という受検生の声に応え、通学圏を拡大したり入試制度を増やさないでください。そして、学校間の序列をつくらない「総合選抜制度」実施地域の復活・拡大をしてください。
  ②中学校教育をゆがめる「特色選抜」や生徒の「青田買い」になる「適性検査」はすぐにやめてください。
  ③「推薦入試」は基準を明らかにするなど、入試の透明化・公正化を図ってください。
  ④11年度から新たに1校増えた「長期欠席者特別入学者選抜」は、通学圏に1校実施してください。また、すべての公立高校で受け入れられるよう改善してください。
  ⑤「入試選抜協議会」を再開させてください。また、高校制度にかかわる検討委員会には教職員組合の代表を参加させたり、現場の教職員の意見を取り入れながら進めてください。

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