山城地域の高校入試「黒書」づくりとシンポジウムの中で明らかになってきたこと


「高校制度改革」の実験場として、山城通学圏の拡大、完全単独選抜入試による「高校入試制度」が改変されて三年が経過し、来年度からは再編統合や再編校の専門学科の募集もはじまります。南山城ブロックは、地元の義務制教組、「山城地域の高校統廃合問題を考える会」と共同して、山城地域の「高校入試黒書」づくりや一二月三日には「高校入試シンポジウム」にとりくんできました。

◆実態とかけ離れた「行きたい学校が選べる」のうたい文句
シンポジウムでは「本当はA高校に行きたかったけどアホやしなあ」という落書きを発見し、「こんな気持ちをもちながら学校に来ている」といたたまれなくなった担任、また、片道二時間もかけて福祉を学びたいという思いで入学したものの続けられなくなった生徒、途中でやめていった生徒が一〇%を超えているようなある高校の様子なども出されました。中学校の先生からは、「どこでも行けそう」という錯覚に陥り、「希望する高校に行ける生徒って自分達のことではなかった」と現実だけが残ったこと、「普通の高校、地元の高校に行きたい」でも行くところがない、倍率で一喜一憂して高校選びに苦労している中学生の実態が浮きぼりにされました。
このように「行きたい高校が選べる」ことをうたい文句にして導入された高校入試制度でしたが、現実には中学校の成績により本人の意思とは関係なく「選ばされて」意に反して高校に通わざるをえない多くの中学生を生み出しています。
また、通学費の家計への負担増から「部活動よりアルバイト」をする生徒が増えている実態など高校生活にまで大きな影響を及ぼし、遠距離通学者ほど退学率が高いこともわかってきました。

◆学校間の格差が 拡大
京都新聞(12/13付)にも引用されましたが、山城通学圏においては、高校授業料減免率が低い高校ほど四年生大学進学率が高く、逆に減免率が高い高校ほど大学進学率は低いというマイナスの強い相関関係があり、それはまだⅠ類においては総合選抜制度を残している京都市や北部通学圏に比べてより強くなっており、親の収入の格差が子どもの進学状況にも反映していることもわかります。
今後、府全域において通学圏の拡大や山城通学圏で実施されている入試制度が拡大すると、このような学校間の「格差」が一層拡大することが予想されます。生じている格差を埋め、子どもたちの教育の機会均等を保障するための一番のセーフティネットは、「総合選抜制」ではないでしょうか。また、府・市教委がすすめている「特色ある学校」で学校間に教育条件にも「格差」をつけるのではなく、すべての学校の教育条件を整備すること、そのうえで一定の選択は認めるものの、希望すれば地元の高校に通える高校入試制度に改善することが必要です。

学校づくりの運動の視点を
統廃合問題について城南高校の教職員は、「新しい再編校の学校づくりは上からの学校づくりになっており、みんなでつくっていくものになっていない」と指摘します。地元の塾経営者が「一人ひとりが学校をよくするためにその場でがんばっていくことがためされる。統廃合に反対する運動の力を『ふつうの学校』『子どもたちがのびのびと生きていけるような高校』をつくる力にしてほしい」と発言しました。
高校統廃合反対運動は、単に校舎がなくなる問題ではなく、どんな学校をつくっていくか、子どもたちにどんな教育をしていくのかという課題であり、生徒参加、父母との共同の学校づくりの運動につないでいくことが重要です。子どもたちの学力をつけるのはもちろんですが、HR、生徒会、クラブ活動など様々な仲間との関わり合いのなかで人間として成長できる場を準備することも大切です。城南高校では、この間、積極的に統廃合問題にとりくんできた生徒会に見られるように、生徒たちが自ら考え、論議し、行動できる生徒を育ててきました。そのような生徒を育てられるような教育活動が、新たに再編される高校でいかにできるかという視点が必要です。

子どもたちの学ぶ権利を守る視点をとことん追求
いま、中学生や父母が求めているのは、大学進学に特化した専門学科や「特色ある」高校ではなく、近くに安心して通える「普通の高校」です。そのような学校をいかにつくっていくか、大いに学校の中で、そして地域で、生徒や父母、地域住民と話し合っていくことが今本当に必要です。「学校を改革する」とは本来内側にあるエネルギーに依拠するものです。上からの「教育改革」「学校改革」ではなく、憲法の精神を生かした共同の学校づくり=教育を国民の側にとりもどすことが私たちの運動の方向性です。その意味でも一人ひとりの子どもたちの学ぶ権利を守る視点をとことん追求することがとても大切です。そのうえに立って、引き続き30人学級などの教育条件を整備させる運動とともに、高校入試のあり方、高校のあり方を府民とともに考え、改悪教基法の具体化と、学校現場へのおしつけを許さないとりくみを発展させていきましょう。
(佐野)

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