定時制・通信制での教育条件の悪化は制度の大きな矛盾、「15の春」を泣かさないために、今こそ「類型制度」「通学圏制度」を見直し新しい高校三原則を実現しよう
1999年8月28日  京都府立高等学校教職員組合執行委員会
1、京都府教育委員会・京都市教育委員会(以下、府教委・市教委)は、来年度の公立高校の入試要項と募集定員を、昨年同様8月20日に発表した。その内容は、
@中学校卒業見込み数が前年度より641人減ることを理由に、全日制で440人の定員減(普通科T類で、400人減)を行い、中学卒業生に対する充足率は、全日制で今年度より0.3ポイント低い56.0%となった
A定時制・通信制の定員は、昨年度・今年度と同じで、全体の募集定員は1万7580人で、1985年以来の最少記録を更新し、全体の充足率も今年度より0.2ポイント低い60.3%となった
Bこれまで府内の中学校卒業見込み者に限られていた推薦入学出願資格を、保護者の住所が願書提出時に府の区域内にある者にまで拡大した
C亀岡市の区域から、山城高校普通科T類に入れる生徒を30人減らし40人以内とした
D八幡市の一部地域から、桃山高校普通科に入れる生徒枠20人を廃止した
E今まで「会計」「情報処理」「流通経済」「国際経済」の4学科に分けて募集していた西京商業高校は、入学後に学科選択ができるように「会計・情報処理学科群」と「流通経済・国際経済学科群」の2群の募集にした
F中国帰国孤児子女は、一般入試で別に定員枠を設けてきたが、海外勤務者帰国子女の特別入試と同様に特別入試制度を設け、一般入試とあわせて2回受験できるようにした
などである。

2、「全日制440人減、定時制・通信制増減なし」という今回の「募集定員」は、「不況の中せめて公立高校に」「希望者高校全入」という府民の切実な要求からは、程遠いものである。両教委の「少子化が進む中、進学率を向上させるために適正な人数を設定した」(8月20日付「読売新聞」朝刊)、「地域的なバランスでみると、受け入れ率は前年度並み」(同日付け「朝日新聞」朝刊)という認識は、全く不十分だと言わざるを得ない。
山城高校・洛北高校の定時制の募集再開が今回も見送られたことにより、2000年3月末での「閉制」が確定した。この募集停止が、昨年度の堀川高校定時制の廃校化の決定とともに、子どもたちや父母の願いに背く蛮行であることは、この間の経過から明らかである。
 1999年度公立高校入試は、長引く不況などの影響で軒並み倍率がアップしたが、その典型が京都市内の府立高校定時制だった。第一次募集で単位制の桃山高校定時制が1.4倍という高倍率になり、第二次募集では、第一次募集で定員が充足し募集しなかった桃山高校定時制普通科を除いて、すべて志願者数が募集人数を上回り、倍率が1倍を越えた。そして、多数の志願者が定時制からもはじき跳ばされた。全日制からはじき跳ばされたり、不登校などで全日制高校への進学をあきらめたり、中卒後何年かたってから高校進学を希望してきたりしている生徒が、教育の機会を求めて志願してきているのに、定時制でも受け入れることができなかった生徒が多数存在するのである。この結果、京都で育った子どもたちが公立高校に入学できない事態をつくり出している。これでも「適正な人数を設定した」などと言えるのか。今年度より充足率が下がった2000年度入試では、よりいっそう深刻な事態が起こりかねない。
定時制を不合格になった生徒が、高校教育の機会を求めて通信制に入学しても、その通信制の教育条件は常識では考えられないほど悪い状態のまま放置されている。朱雀高校通信制では、1998年度当初の生徒数が1471人で、そこに1999年度新入生として245人(定員は160人)が入学し、その他転編入もあり、文字どおりパンク状態である。60人以上の生徒であふれ、廊下にまで机・いすを並べるスクーリング、一教室で4クラスが詰め込まれて行われるHR…。まさに戦後のベビーブームの時期に戻ったかのような有り様であり、教育の機会均等が奪われているのである。抜本的な対策が求められるのである。
 私たちは、これらの実態にほうかむりしたまま、今回も府立高校全体の募集定員を削減した府教委の姿勢を糾弾するものである。

3、全日制でも、従来から指摘してきた収容上の問題が、引き続き放置されている。
 1999年度公立高校入試では、引き続き高校制度・入試制度が原因であるU類の大幅な定員割れが起こっている。府教委の資料によると、1999年度入試でU類の定員割れは山城南北通学圏で49人であった。山城北通学圏普通科U類理数系では、出願時点で既に定員割れという事態になっていた。昨年も指摘したが、U類の定員割れはあとから埋めることができないため、自動的に普通科全体の定員割れになり、府立高校の収容率を下げるのである。また、U類を希望しU類に合格する成績を持ちながら、希望する高校のU類に入れないことを理由に、希望する高校のT類に回る生徒が存在するために、本来T類に合格する成績の生徒がT類から押し出されている。これは、類型別に募集する現在の高校制度・入試制度の持つ大きな矛盾である。一方で、普通科の不合格者は山城南北通学圏で89人あり、類型別募集をしていなければ、その半数以上は合格した可能性がある。
また、先に指摘したように、府立高校で定員が削減されたのは、すべてT類である。私たちは、定数を希望者全員入学にふさわしく確保し、その上で30人学級を実現することを要求しているが、主に地元の高校生が通うT類を削減するとは以ての外である。これによってさらに長距離通学が増えることが懸念される。
 しかも、今回の定員減により、南八幡高校普通科T類は1クラスだけになった。制度上、T類は2年次から理系・文系・一般系に分かれる。生徒の希望で、それぞれの系が40人の倍数になることは難しく、40人を越えるクラスができたり、希望する系の変更を迫られる生徒が出てきたりすることが、この高校制度が始まって以来問題になっている。T類が1クラスになれば、系別クラスをつくることは不可能で、1クラスの中に3つの系の生徒が共存し、系毎の講座授業をせざるをえなくなるが、これを保障する教育条件を整える責任が、T類を1クラスにした府教委にはある。
こういった機械的とも言えるT類の定員削減の一方で、必要な地域に公立高校を増設せず、マンモス校は放置されたままである。
亀岡高校は、現在33クラスあり、校舎は満杯状態である。しかも、2年次のT類の系選択にかかわって、クラスを増やすことも認められず46人や47人(1998年度)といった40人をはるかにオーバーするクラスが存在する。4クラスで募集し、2年次には1クラス増やし、生徒数が30人台前半の5クラスとなっている西宇治高校と比較すると、教育条件の劣悪さは歴然としている。今回、山城高校T類に設けられている亀岡市の区域の定員が、70人から40人となったが、亀岡高校の来年度の募集定員はこの数年と同じ11クラスである。来年度も亀岡高校は、33クラスの超マンモス校のままなのである。
今年度30クラス以上の超マンモス校は、府立高校で、昨年度より1校増えて6校である。府立高教組の調査によると、今回の募集定員の発表によって、来年度の30クラス以上の超マンモス校は6校のままである。府教委が何ら改善の手を打たなかったというわけである。詳しく見ると、山城高校が1クラス減って29クラスになるが、亀岡・莵道・西城陽各高校は、今年度と同じそれぞれ33・30・30クラス。洛西・南陽高校は1クラスずつ増えてそれぞれ32・33クラスに、また、新たに城陽高校が30クラスになる。それぞれの高校では、今後普通教室の確保など施設・設備の問題が焦眉の課題となるが、教育条件の悪化は火を見るより明らかである。私たちは、14校の複数教頭制を直ちにやめてこれら6校に養護教諭を複数配置するなど、教職員定数をはじめとする抜本的な教育条件の改善を要求するものである。

4、府教委・市教委は、今回、京都府内に住みながら他府県の中学校に通っていた生徒が、京都府内の公立高校に進学してきていることなどを理由に、推薦要件を緩和した。しかし、私たちが従来から指摘してきた推薦入試をめぐる、「『50%程度』としながら、それをはるかに越える合格者を出している」「推薦入試の直前に行われる適性検査で、事実上『合格』を決めている」などの問題点については、何ら手を打っていない。
 この間の府民やマスコミの世論と私たちの要求によって、推薦入試による内定者数は八〇%近い内定者を出した数年前より低く押さえられてきている。しかし、一九九九年度入試を見ても、七割前後の内定者を出している類・類型・学科がある。内定率の高いのは、大江高校ソフト経済科76.25%、南八幡高校流通マネージメント科75%、府立工業高校情報システム科72.5%などである。これらは、すべていわゆる職業学科である。一方、以前、内定率が高く、マスコミなどでも指摘されていた嵯峨野高校京都こすもす科は67.5%、V類体育系は6割以下となっている。U類英語系でも、設置している4校(洛北高校・東宇治高校・南陽高校・南丹高校)すべてで67.5%となっており、府教委の「指導」がうかがわれる。しかし、「50%程度」という「入試要項」から程遠いことに変わりはない。
また、一九九九年度公立高校入試においても、適性検査を実施している類・類型・学科の一部で、適性検査の合格者を定員とほぼ同じ人数に絞り込み、事実上適性検査の合格者が、その類・類型・学科の合格者になってしまうという事態が起こっている。
 府教委・市教委の広報資料「平成十一年度京都府公立高等学校普通科第V類等適性検査に係る合格者数について」によると、適性検査合格者は、定員40人の普通科V類体育系では、洛北高校43人、鳥羽高校43人、向陽高校40人、久御山高校42人、西城陽高校42人、嵯峨野高校京都こすもす科では、人文芸術系統41人(定員40人)、国際文化系統83人(定員80人)、自然科学系統42人(定員40人)、定員30人の園部高校京都国際・福祉科では、国際交流系統35人、福祉教養系統34人となっている。適性検査を合格していないと、一般入試が受けられないという仕組みだけに、「適性検査で合否を決定している」とも言える。実際に、鳥羽・久御山・西城陽各高校のV類体育系、嵯峨野高校京都こすもす科国際文化系統では、適性検査合格者がそのまま「合格」している。推薦入試と一般入試という二回の受検機会を設定しながら、実質的には推薦入試の前に行う適性検査で合格者を「決定」するというのは、自ら決定した「入試要項」をも無効にするものである。子どもたちにとっては、ペテンとも言える入試制度である。
 私たちは、推薦入試の廃止を要求するとともに、当面、「50%程度」という定員枠の厳守、「適性検査」の廃止を要求する。

5、昨年の学校教育法の「改正」によって、公立でも設置できるようになった中高一貫教育は、今年度宮崎県に続いて、三重県・岡山市でも始まっている。京都府でも、文部省の「地域の実情に応じた中学と高校の接続のあり方や教職員の連携や交流、教育活動の進め方などの研究」というテーマの委嘱事業で、東舞鶴高校と舞鶴市立白糸中・青葉中、西乙訓高校と長岡京市立長岡第四中・大山崎町立大山崎中が、一年間の指定研究を行う。また、「中高一貫教育の利点や課題などを検討」するために、一九九八年十月に学識者や行政、PTA関係者による「中高一貫教育研究会議」を発足させ、武田盛治教育長は文部省の「中高一貫教育推進会議」のメンバーになっている。
 府教委の従来の姿勢からも逸脱して、一方的に指定されたこの研究は、「中高一貫教育校の導入を前提にしているものではない」とされているが、そもそも文部省「教育改革」で打ち出された中高一貫教育の導入が「学校制度の複線化」をもくろむもので、受験競争の低年齢化を進めるものであるだけに、私たちは「中高一貫教育」の推進には反対する。
 この間府教委・市教委が行ってきた、機械的な募集定員削減、類型の再配置、単位制・総合学科の導入や嵯峨野高校・園部高校・堀川高校などでの新学科設置は、学区をさらに拡大し、「特色づくり・高校多様化」の名のもとに学校間格差をいっそう広げ、結局は、子どもの進路を閉ざすことにつながってきた。そして、府教委は、教育課程編成・教職員定数配置などでも公然と差別的な扱いをして、この「格差」の拡大・固定化をはかろうとしている。
 私たちは、一度生じた学校間格差や生徒の「劣等感」「あきらめ」などをなくすために、教職員や生徒・保護者がどんなに苦労をしているかを知っている。今、多くの教職員や生徒・保護者が願っているのは、地域の高校の充実をはかり、学校間格差をなくし、30人学級を実現し、基礎学力を付けるとともに生徒の選択を保障して、希望の進路実現をめざす高校づくりである。その理想に一番近いのは、高校三原則の伝統をもつ京都である。しかし、府教委の行っている諸施策はこの方向にことごとく逆行しているのである。
私たちは、高校三原則の伝統を生かした新しい高校制度の確立をめざして、今後とも府民的討論を巻き起こし、大いに奮闘するものである。