ますます深まる「類型制度」「通学圏制度」の矛盾、
  今こそ高校3原則の良さをいかした新しい京都の高校制度を実現しよう

〜2001年度公立高校入試要項・募集定員に対する見解〜

                         2000年9月7日 京都府立高等学校教職員組合常任執行委員会
 京都府教育委員会と京都市教育委員会(以下、府教委・市教委)は、2001年度公立高校の入試要項と募集定員を、8月25日に新聞発表した。その特徴は以下の点である。
@中学校卒業見込み数が前年度より1519人減少することを理由に、全日制で610人の定員減を行った。学科別の内訳は、普通科400人減、総合学科20人減、農業・家庭に関する学科20人減、商業に関する学科170人減である。この結果、中学卒業生に対する充足率は、今年度より0.9ポイント上がって56.9%となった。
A定時制の募集定員は西京商業を160人減とし、今年度より大幅に減らした。この結果、充足率は0.3ポイント下がって4.0%となった。通信制は今年度と変わらなかった。
B総定員は今年度より770人減り、1985年に現行の選抜制度になって以来、最少の1万6810人となった。全体の充足率は60.9%となり、今春より0.6ポイント上がった。
C入試要項での最大の変更点は、推薦入試の募集枠の拡大と日程変更である。従来は推薦入試を実施する学科・類すべてが「定員の50%程度」としていたが、普通科V類(体育系・芸 術系)、美術工芸に関する学科、音楽科は定員の100%を推薦で募集し、V類体育系は適性検査を廃止している。また東宇治、南陽のU類英語系や郡部の専門学科など14校・1分校で「定員の70%程度」に拡大し、嵯峨野京都こすもす科や堀川人間探求科、自然探求科など京都市内校を中心に「50%程度」に据え置いている。日程は、願書受付2月5・6日、入試を2月15日と、昨年度に比べて2週間繰り下げている。
D府立商業高校は従来「流通経済」「国際経済」「会計」「情報処理」の4学科に分けて募集し ていたが、「商業系学科群」として一括募集し、入学後に学科選択することとした。
E一般入試の願書受付を2月23、26、27日とし、学力検査当日までの日数が今春より4日も短縮されて7日間となった。また、通信制の出願が、従来の4月初旬から3月26〜29日と変更された。

1.学校現場の切実な要求と府民の願いに応えない募集定員
 府立高教組は7月26日、府教委に「公立高校の募集定員と入試にかかわる緊急要求書」を提出した。その要求書では、@通学圏による不均衡が生じない募集定員の策定、A通学圏における通学区域のゆがみの是正、B入試制度の矛盾の解決、C定時制・通信制の生徒急増対策、D推薦入学枠の拡大中止、を求めた。また府立高教組の定時制通信制部も、市立高教組と連名で「公立高校定時制・通信制課程の生徒急増に関する緊急要請」を行った。
 しかし残念ながら、今回の募集定員と入試要項は、学校現場の切実な要求に応えず、高校教育に対する父母・府民の願いに応えるものにはなっていない。今春中学卒業者の高校進学率が全国平均を下回る95.1%と、全国三七番目に落ち込んだ京都府の現状が、「15の春を泣かせる」ものとなっていることを物語っている。
 2000年度入試では、京都市北通学圏で341名の不合格者を出し、他の通学圏と比べて異常な突出となった。これは明らかに募集定員配当の誤りであり、通学圏制度の矛盾を露呈したものである。今回の募集定員では、他の通学圏が募集定員を減らしたのに対して、京都市北通学圏は定員を据え置いて一応の「対策」をとっている。しかし、はたしてこれで京都市北通学圏内の中学生の苦しみを緩和できるのか、はなはだ疑問である。
 さらに、山城南通学圏の120人減など、大幅な定員減となった通学圏もみられ、通学圏による不均衡が一層拡大されるおそれがある。2000年度入試の京都市東通学圏では、東稜高校と洛東高校のU類理数系で定員割れが起こる一方、洛北高校と北稜高校のU類理数系で定員を超えた入学生があった。こうした通学区域のゆがみを是正する措置はまったくとられていない。このように、通学圏による高校入試の矛盾は一層深まっており、一日も早く小学区制を生かした通学区制度を検討することが求められている。
 こうした中学卒業見込み数の減少を理由にした機械的な募集定員の削減は、高校進学の保障と高校の少人数学級化の道を閉ざすものである。中学卒業見込み数の推移をみると、現在の学級数を維持するだけで2003年度入学生から「35人学級」が実現する。そして、あと少しの努力によって「30人学級」が実現するところまできている。しかし、府教委・市教委にはそうした願いに応える姿勢がまったくみられない。

2.全日制のマンモス校放置、入試制度の矛盾ますます深まる
 全日制では、従来から指摘されてきた収容上の問題が放置され、入試制度の矛盾がますます深まっている。
 2000年度公立高校入試では、前年度に引き続いてU類の大幅な定員割れが起こった。府教委の資料によると、山城北・南通学圏で85人の定員割れを起こしている。山城北通学圏ではU類人文系・理数系が、山城南通学圏ではU類人文系が出願時点ですでに定員割れという事態になっていた。U類の定員割れはあとから埋めることができないため、自動的に普通科全体の定員割れになり、府立高校の収容率を下げているのである。また、U類を希望しU類に合格する成績をあげながら、希望する高校のU類に入れないことを理由に、希望する高校のT類にまわる生徒があり、本来T類に合格する成績をあげた生徒がT類から押し出されている。一方で、山城北・南通学圏の普通科全体で100人が不合格となっている。類・類型別募集をしていなければ、その多くは合格していた可能性がある。いわゆる「U類離れ」の傾向がすすんでおり、通学圏の中でいわゆる「学校間格差」が拡大するとともに、類・類型制度とそれに基づく入試制度の矛盾は一層深まっている。また、全日制普通科で定員が削減されたのはすべてT類である。主として地元の高校生が通うT類を減らすことで、遠距離通学が増え、「地域の高校」からますますかけ離れていくことが懸念される。
 このように機械的とも言える定員削減の一方で、マンモス校は依然として放置されたままである。今年度府立高校での30クラス以上の超マンモス校は、洛西、莵道、城陽、西城陽、南陽、亀岡の6校である。2001年度は、城陽高校が29クラスとなって30クラス以下となるが、洛西高校が32クラスから31クラスになる他は変化はない。亀岡高校、南陽高校は依然として33クラスという超過密校のまま放置されている。近隣高校がクラス減になっている場合でも、これらの超マンモス校はそのままである。
 亀岡高校では、ここ数年33クラスの満杯状態が続き、授業に必要な最低限の教室確保も厳しい状態である。4クラスで募集し、3年次には1クラス増やして、30人代前半の五クラスとなっている西宇治高校と比較すると、教育条件の劣悪さは歴然としている。私たちは、超マンモス校の教育条件改善を強く要求するものである。

3.定時制・通信制の過酷な現状に背を向ける
 公立高校定時制・通信制の生徒急増問題は、一日も猶予できない問題である。しかし今回、西京商業定時制の募集定員を大幅に減らし、まったく手を打っていない。市教委当局は「全日制の収容率があがるので、大丈夫だ」という趣旨の回答をし、子ども達や父母の切実な願い、学校現場の声に耳を傾ける姿勢はまったく示していない。
 2000年度入試でも、定時制入試は昨年度に続いてきびしいものがあった。第一次募集では、桃山高校定時制普通科と福知山高校三和分校で志願者が募集定員を上回った。第二次募集では、多くの市内定時制で志願者が募集定員を上回る結果となった。その結果、多数の志願者が定時制から締め出されることになったのである。特に京都市内では、京都市北通学圏にみられたように、多数の生徒が全日制から締め出された。不登校や中退で全日制をあきらめたり、中学卒業後年数がたってから高校での学習を希望する生徒がたくさんいる。定時制通信制教育では少人数授業などによる行きとどいた教育がより必要とされているにもかかわらず、こうした人々への教育の機会さえ保障されないのが、今日の京都府の教育なのである。
 さらに、定時制教育の機会さえ保障されない人々の最後の学習の場である通信制の教育条件は、信じられないような状態のまま放置されている。昨年新聞紙上でも取り上げられた朱雀高校通信制では、生徒増に歯止めがかからず、新入学257名(募集定員は160人)、編転入学206名で、在籍生徒数は1665名となっている。文字通りパンク状態であり、廊下にまであふれて受けるスクーリングやHRの様子は、まさに異常事態とよばざるを得ない。現場の要求を受けて、通信制の出願時期を繰り上げたのは当然の措置であるが、こうした状態を放置したまま、公立高校全体の募集定員を削減した府教委・市教委の責任はきわめて重大である。

4.推薦入試の不透明さ一層進む
 今回の入試要項での最大の変更点は、推薦入試に関する箇所である。推薦入試日程は、各方面からの批判を受けて繰り下げる措置をとったが、推薦入学枠を100%、あるいは70%と拡大したことは、下記のような推薦入試の矛盾を一層進行させるものである。これについて、「例年70%近い内定者を出す学校が多いため、実態に近づけた」(8月25日付読売新聞)としているが、これこそ現在の推薦入試が自らが定めた入試要項すら無視した、ルール破りの制度であることを物語っている。
 推薦入試については、我々は次のような点を批判し、当局に改善を強く要求してきた。
 @推薦入試の合格基準が不明瞭であり、合格者決定が管理職と一部の教職員によって行われており、合否決定などの不透明さが高校入試をゆがめる一因となっている。
 A「50%程度」としながら、それをはるかに超えて内定者を出して、明らかに子どもや父母をあざむくものである。
 B推薦入試と一般入試という2回の受検機会を設けながら、実質的には推薦入試の前に行う「適性検査」で合格者を決定するという、ペテンともいえる入試制度である。
 C「良い生徒(選手)」の「青田買い」ともいえる状況が進行しており、中学校教育さえゆがめることになっている。
 今回の推薦入学枠の拡大が、こうした問題を一層進行させることは火を見るより明らかであり、入試の公平性を一層疑わしいものにしていくことを警告しなければならない。推薦入試については、「V類体育系では、中学・高校の顧問同士の話で合格が決まっているのではないか」とか、「特定の部顧問の推薦枠がある」など、公立高校の入試にあるまじき実態が公然とささやかれている。昨年度からは他府県からの越境入学が公然と行われ、公立高校の在り方として極めて異常な状態が進行している。このようなことが決して子ども達にとってプラスにはならず、中学校教育や高校入試を一層ゆがめて府民の批判を高めることは避けられない。こうした矛盾と不透明さを一層深める現在の推薦入試制度の廃止を強く要求する。

5.高校三原則の伝統を持つ京都でこそ新しい高校制度の確立を
 今年度から府教委は、「府立学校の在り方懇話会」を発足させ、府立高校と障害児学校の将来の在り方を検討しようとしている。その審議内容を見る限り、残念ながら、こうした矛盾の解決や子ども達の苦悩に応えようとする姿勢はみられない。それどころか、「個性化」「多様化」の名のもと、安易に文部省のすすめる「教育改革」の後追いをし、「特色ある学校づくり」をすすめようとしている。
 この間府教委・市教委が行ってきた、類型の再配置、単位制・総合学科の導入や嵯峨野・園部・堀川高校などへの新学科設置は、通学区をさらに拡大し、「特色づくり」「高校多様化」の名のもとに学校間格差を一層拡大し、子ども達の進路に新たな困難を生み出してきた。そして府教委は、教育課程編成や教職員定数配置などでも公然と差別的な扱いをして、「格差」の拡大・固定化を図っている。
 しかし、こうした多様化路線が決して今日の高校教育がかかえる課題に応えるものでないことは明らかである。京都でもそれは顕著で、「特色ある専門学科」を設置してきた商業に関する学科が、相次いで学科群による募集に変えざるを得なくなっている。今回も府立商業高校が学科群募集に変更しているが、学科ごとの生徒募集が困難になっていることをあらわしている。
 17歳の少年による相次ぐ凶悪犯罪が社会に大きな衝撃を与えている。個々の事件によって動機や原因は異なるが、背景に今日の教育制度や高校入試の問題が横たわっていることは明らかである。本来豊かな人格的資質を育むべき教育の場で、猛烈な競争の教育が行われてきたことがいかに子ども達の苦悩を深いものにしたか、私たち大人は受け止めなければならない。
 多くの子どもや父母、現場で苦闘する教職員が願っているのは、希望するもの全員が格差のない地域の高校で、安心してのびのびと学べることである。30人学級を実現して、基礎学力の充実と選択の保障で希望の進路実現をめざす高校づくりである。高校3原則の伝統を持つ京都でこそ、21世紀に向かって新しい高校制度を確立する可能性が開かれるのである。
 私たち府立高教組は、こうした府民的討論と取り組みを巻き起こしていくため、一層奮闘することを表明するものである。